【報告】浪江町・双葉町不動産「全損」和解案受諾のご報告

浪江町・双葉町不動産「全損」和解案受諾のご報告

 

 

2012年11月3日

原発被災者弁護団

 

浪江町及び双葉町の不動産についてそれぞれ「全損」を前提とする原子力損害賠償紛争解決センターの和解案が提示されたことを既に当ホームページにおいてご報告していました(浪江町についてhttp://ghb-law.net/?p=523、双葉町についてhttp://ghb-law.net/?p=539)。

今般、両事件について東京電力から上記の和解案を受諾する旨の連絡がありましたのでご報告申し上げます。  いずれの件も不動産・家財の賠償額について清算条項を入れない(今回の和解案の賠償額で全ての損害が賠償されたとは扱わない)という前提での和解案の受諾です。

 

不動産・家財の賠償については「全損」と評価した上で、具体的にその損害をどう金銭評価すべきかという問題が重要であるところ、この点は上記のセンターの和解案においても解決されておらず、今後の検討課題として残さたままの状態にあります。 ただし、大熊町・双葉町・浪江町・富岡町・葛尾村においては避難指示区域見直しの協議が賠償金額算定の問題との関係で難航している中、センターが上記の両和解案のように実質的・合理的に考えて区域と賠償金割合を切り離すこともあり得ると示唆した意義は大変大きいと言えます。

 

すなわち、東京電力の不動産賠償の基準によれば、現時点において全く帰還の見込みが立っていない地域であっても、ひとたび区域の見直しにより居住制限区域、避難指示解除準備区域と指定されれば、当面は不動産評価額の2分の1または3分の1の賠償金しか受けることができません。しかし、これを形式的に適用することは、原発事故後1年半以上も経過する中で帰還の目途が立たずに新たな地で生活を再建することの選択を迫られている被害者の救済を妨げることは明らかです。

 

今回のセンターの上記両和解案の提示と東京電力の同和解案の受諾は、賠償も除染も進まず、今後の生活再建の目途が立たない状態に置かれたままの状態の多くの被害者らに、一定の希望を与えるものと積極的に評価できるものです。

 

                                 以上