平成24年4月16日
南相馬市民130人による原発ADR事件についてのお知らせ (和解案の概要)
原発被災者弁護団
問合先 〒105-0001
港区虎ノ門1丁目8番16号 第2升本ビル5階
TEL: 0120-730-750
当弁護団は、平成23年12月28日、南相馬市内の住民130人(34世帯)を代理して、原子力損害賠償紛争解決センターに対し、東京電力株式会社を被申立人とする和解仲介(原発ADR)を申し立てていましたが、本日午前10時に開催された第4回口頭審理期日において、同センターから和解案及びその理由が提示されました。
この和解案の概要は以下のとおりです。
精神的損害
- 本件事故発生時に(旧)緊急時避難準備区域に居住していた申立人のうち、事故後避難していた 期間のある者については、中間指針等に従い、一人月額10万円(但し、避難所等に避難していた期間については一人月額12万円)を賠償する。
- 本件事故発生時に(旧)緊急時避難準備区域に居住していた申立人のうち、事故発生後一年間 の間に上記1の慰謝料の支給対象期間とならない期間を有する者(注:事故後一年間の間に帰宅し自宅に滞在した期間のある者。以下「自宅滞在者」という。)については、下記の基準による慰謝料を賠償する。(平成23年3月分は1か月分の10万円を賠償する。)
平成23年3月11日から平成23年9月30日まで 月額10万円
平成23年10月1日から平成24年2月29日まで 月額8万円
理由
本件地域における本件事故後の生活は、非常に不便であり、日常生活が著しく阻害されていたものと認められる。警戒区域の住民は、自宅と生活基盤を根こそぎ奪われ、収入の回復も困難であったが、避難先において商店や医療介護施設の不足に苦しめられる状況ではなかった。本件地域の住民は、自宅は奪われなかったものの、地域の経済的基盤の重要な部分を毀損され、商店や医療介護施設の不足に苦しめられ、これを補充するような措置も講じられなかった。また、物流の悪化・物資の入手困難に伴う物価上昇にも苦しめられた。そうすると、本件地域の日常生活は、避難生活に匹敵する程度に不自由なものであったというべきである。そのような不自由さを補てんするための慰 謝料額は、月額10万円が相当である。なお、緊急時避難準備区域の指定が解除された後は、直ちに 帰還が可能となったり、生活の不便さが解消したものではないが、復興のための計画の策定も可能となり、それまでよりも日常生活の不便さがやや解消したものというべきであるから、慰謝料額は、月額8万円が相当である。
避難交通費関係
- 避難及び帰宅に要する交通費は、東京電力の基準による。
- 一時立入に要する交通費は、月1回の場合は、全て東京電力の基準による。
月2回以上の場合は、1回目は東京電力の基準により、2回目以降について下記の賠償を認める。
・福島県内 車一台につき片道1回3000円
・福島県外 車一台につき片道1回5000円
但し、上記を超える領収書がある場合は、実費全額を賠償する。
一時立入の回数は、目的を問わず、制限しない。申立てのあったすべての一時立入につき、交通費の賠償を認める。本件事故がなければ、このような交通費の支出はなかったと考えられるからである。
避難宿泊費関係
- 支出した実費を賠償する。親族知人宅宿泊謝礼も同様とする。日数制限は設けず、申立てのあったすべての日につき、宿泊費・宿泊謝礼の賠償を認める。実費の認定方法は以下のとおり。
領収書があれば、原則として、その記載金額とする。但し、親族知人宅宿泊謝礼は、一人一日 6000円を上限とする。申立人の陳述のみによる場合は、一人一日3000円を上限とする。
- 知人宅宿泊につき謝礼品を交付した場合の謝礼品購入費用も、金額、日数につき上記と同じ基準の範囲内で認める。
- 避難先で借家を借りた場合には、賃料、礼金及び仲介手数料の全額と敷金の2割を賠償する。
生活費増加分
- 食料品
専業農家、兼業農家、自家用のみの生産農家について、本件事故前に米、野菜を小売店で購入していなかった(自家産品の使用又は交換等で調達)場合には、下記の基準で賠償を認める。
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米・野菜 |
米のみ |
野菜のみ |
同居家族(4人以下) |
年12万円 |
年4万円 |
年8万円 |
同居家族(5人以上) |
年18万円 |
年6万円 |
年12万円 |
- ミネラルウオーター
自宅滞在者が、事故後1年間の間に、井戸水又は水道水の利用に代えてミネラルウオーターを購 入した場合には、その購入に係る費用として、下記金額を賠償する。
同居家族(4人以下) |
月額5000円 |
同居家族(5人以上) |
月額8000円 |
- 電話料金増加分
領収書等により増加分が証明できる場合は、増加分の実額全額を賠償する。それ以外の場合 は、賠償すべき損害であると認めるが、原則として、上記月額慰謝料に含まれるものと扱う。
- 教育関係費用
避難による転校に伴い、学納金、制服類、高額の学用品の追加的支出があった場合には、その全額を賠償する。領収書等により追加的支出が証明できる場合には、その全額を賠償する。
それ以外の場合は、本人の陳述等により、合理的な金額を賠償する。
一人当たりの標準額 |
高校の転校 |
10万円 |
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小・中学校の転校 |
5万円 |
- 家財道具
避難等により家財道具等を新たに購入せざるを得なかった場合、領収書等により実額が証明で きる場合は、実額全額を賠償する。それ以外の場合は、平成23年9月30日までに避難を開始した 者に限り、下記の金額を賠償する。
- 衣類、日用品
仮払い補償金は、本件においては、原則として全部精算するものとする。全額の精算が申立人 の生活を困窮に導き、他方において将来の賠償額により残額の精算が可能であるとみられるよう な事情のある場合においては、一部の精算にとどめるものとする。
その他
- 仮払い補償金
仮払い補償金は、本件においては、原則として全部精算するものとする。全額の精算が申立人 の生活を困窮に導き、他方において将来の賠償額により残額の精算が可能であるとみられるよう な事情のある場合においては、一部の精算にとどめるものとする。
- 弁護士費用
損害額の3%を弁護士費用として認めるのが相当である。