【報告】浪江町不動産についての「全損」和解案提示のご報告

浪江町不動産についての「全損」和解案提示のご報告

 

平成24年10月12日

東日本大震災による原発被災者弁護団

 

当弁護団が平成23年11月30日に原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」といいます。)に申立てた案件(平成23年(東)第260号事件)について,原発事故当時浪江町に居住し,浪江町(津島方面)に複数の不動産を所有していた申立人に対し,センターは平成24年10月2日,申立人所有の浪江町内のすべての不動産(それぞれ福島第一原発から約10キロ,約29キロ,約31キロ地点)について,「全損」を前提とした和解案を提示しました。

 

 

東京電力は,浪江町が国による区域の見直しがなされていないという理由で,居住制限区域とみなし,同社基準による不動産損害算出額の2分の1(72ヶ月分の36ヶ月)の金額を提示してきました。しかしながら,センターは2分の1の金額では生活再建に向けた不動産の再取得には不十分であるとして,現時点で帰還困難区域と同じく全損を前提とした金額を支払うべきとしました。

 

 

和解案に対する東京電力の回答期限は10月15日(月)に定められました。

※東京電力側の上申により10月末まで延長されています。

 

 

不動産賠償については,本年7月20日に経済産業省が「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方について」を発表し,さらに7月24日に東京電力が賠償基準をプレスリリースで発表しました。しかしながら,2ヶ月以上経過してもセンターでの不動産賠償和解はほとんど進んでいません。その最大の理由が,避難指示区域の見直しが未だなされない自治体(現在は大熊町,双葉町,富岡町,浪江町,葛尾村)がある以上,基本的に賠償を拒絶するという方針を東京電力がとっているからです。また,センターの仲介委員にも不動産賠償の和解案提示を保留するという消極姿勢がありました。このことで多くの被害者がセンターへの申立をしていながらも,なかなか生活再建に踏み切れず苦しい立場に置かれていました。

 

 

今般,浪江町の申立人に対して出された不動産賠償和解案は,大熊町に次いで区域見直しがなされない状況下で提示されたものです。土地建物の賠償額の算定にあたってほぼ東電基準にそのまま依拠してしまっていること,家財については帰還困難区域のほぼ2分の1の金額であるとしているなど様々な問題を残しており,仮に受諾するとしても清算条項を付した和解は不可能だと考えます。ただ、一方で国の区域見直しに関わらずに,その町の機能及び実態に着目して一歩踏み込んだ判断をしたものとして,一定の評価ができると考えます。

 

 

 センターには引き続き,区域見直しに関わらず被害者が生活再建できるような賠償和解案をすみやかに提示していくよう求めます。また,当然のことながら東京電力は当該和解案を尊重するべきことを強く求めます。

 

以上