【意見】原発事故から3年目を迎えて

原発事故から3年目を迎えて

                      弁護団長 丸山輝久

 

 

 

当弁護団は、現在、400人近い弁護士によって構成され、個人約6000人、法人約100社の被災者の方々から損害賠償請求の依頼を受けて、その実現のための活動に邁進してきました。

 

 

弁護団結成から約2年半、私どもは、福島の被災地や避難先の仮設住宅などに幾度となく足を運び続け、被災者の現状をつぶさに見、お話を伺い続けてきました。

 

 

被災地の殆どは里山です。里山は、日本の原風景であり、日本人の社会生活のあり方や生き方の心根を育んできたところです。2020年オリンピック招致運動で脚光を浴びた「おもてなし」という心も、山野や小川に囲まれた自然と共生しながら助け合う共同生活の中で培われてきたものだと思います。その里山が放射能に汚染され、住宅地や田畑の除染は3年経った現在でもまだ道半ばであり、山野や小川に至っては手つかずのまま放置さています。そして、除染が終了した地域でも、再び、周りの山野から風雨や小川の流れによって里山に運ばれてくる放射能によって、再び汚染度が高まり除染の効果が薄れ始めています。それなのに、避難解除と帰還だけが推し進められています。

 

 

被災者が心安らかにオリンピックを迎えることができなければ、原発の恩恵を一手に享受してきた東京が、「おもてなし」を叫んでオリンピックを開催しても、その叫びは空虚で、まやかしではないかと思えてなりません。

 

 

私たちは、このような被災地の現状に直面して、損害賠償請求の支援しかできないもどかしさと焦りを感じ、力の限界を感じています。しかし、それを続けていくのが私たち弁護士の使命だと肝に銘じて、今後も取り組んでいきます。

 

 

和解仲介に全てを託してきました。今年1月20日現在で、422件(個人4672人、法人74社)の申立を行い、財物損害賠償を除いて186件(約4000人、数社)について和解を成立させてきました(成立確実も含む)。そして、申立準備中のものがまだ2000人を超えています。当弁護団で最も特徴的なことは、地域ごと、あるいは事業ごとの集団申立を行って統一的一括解決を行ってきたことです。この方法は、「おもてなし」の原点である里山の再生と、地域共同体の「絆」の再構築の一助にという期待も込めて行ってきたものです。その詳細については、このホームページの活動状況の報告をご覧下さい。

 

 

その中には、東電に対する直接請求では拒否された賠償項目についても和解によって獲得し、その結果、東電への直接請求に反映されて支払われるようになったものも少なくありません。また、和解の成果が、昨年12月に発表された原賠審の第4次追補に大きな影響を与えています。

 

 

今後も、原紛センターで適正な賠償の和解が可能と思われるものは、同センターへの申立を優先させていきます。

 

 

今年からは、原紛センターでの解決に加えて、国に対する国家賠償請求も含めた提訴を開始します。これは、原紛センターでは和解が無理なもの、同センターでの和解では不十分なものが中心です。しかし、原発は国の積極的な推奨と管理の下で、エネルギー政策の中核として推し進められてきたのですから、電力会社のみに責任を問い続けることは妥当ではないことと、二度と原発事故を起こさせてはならないという意味で、きちんと国の責任を問うべきだと考えるからです。

 

 

また、昨年、他の支援団体と共同して、国会に対する請願署名運動や集会などを開いて、国や国会に対して、被災者支援の施策を、速やかに、かつ、きちん実行することを求める運動を行ってきましたし、直接国会議員や政府に働きかける行動もしてきました。このような運動は今後も続けていきます。ご協力ください。

 

 

当弁護団は、今後も、被災者の要請があれば、可能な限り足を運んでお話をお聞きし、被災者の方と一緒になって考え、ご要望に添えるよう努力していきます。

 

 

 

以 上