【報告】伊達市霊山町小国・坂ノ上・相葭地区集団ADR申立て 和解案の報告

 

 

伊達市霊山町小国・坂ノ上・相葭地区集団ADR申立て

和解案の報告

 

平成26年1月28日

   原発被災者弁護団

 

当弁護団で,平成25年2月5日,伊達市霊山町の小国・坂ノ上・相葭地区住民による原子力損害賠償紛争解決センターへの集団申立てをした件につき、平成25年12月20日、センターから和解案が提示されました。

 

<申立内容>

申立人らは伊達市霊山町小国,坂ノ上・八木平,月舘町相葭地区の特定避難勧奨地点の指定を受けていない世帯の方(330世帯、1008人)です。

特定避難勧奨地点の指定を受けた世帯については、一人あたり毎月10万円の慰謝料が被申立人から支払われるほか,避難費用の賠償や,医療費,国民健康保険料,介護保険料の無料化等の支援がなされる一方で、指定を受けない世帯についてはいわゆる自主的避難等対象区域の賠償(一人あたり8万円、子ども・妊婦は40万円又は60万円)のみという大きな格差が生じてしまいました。

本申立は、かような状況で、十分な賠償や各種支援制度の適用を受けられない住民が原発事故による様々な精神的苦痛を訴え、最低限の慰謝料としてひとりあたり月額10万円の賠償を求めたものです。

(詳しくは「原発被災者弁護団」ホームページ 2013年2月5日ニュース参照)

 

<和解案の骨子>

①  慰謝料額

平成23年6月30日から平成25年3月31日まで、ひとりあたり月額7万円(22ヶ月間)の慰謝料を賠償する。

②  賠償期間

始期については、特定避難勧奨地点の最初の設定の日とし、その終期については、特定避難勧奨地点の設定の解除から相当期間経過後とするのが合理的であり、平成23年6月30日から平成25年3月31日までとする。(当日以前に相続が発生した案件については、相続発生月まで)

③  避難者

避難者についても、放射線被爆へ恐怖や不安及び実生活上の様々な制限・制約を避けるために避難したものであり、それにより生じた精神的苦痛は、滞在している者と同様である。

④   弁護士費用

申立人らが和解により支払いを受ける額の総額の約2%である3000万円が相当とし、全体慰謝料額に加算されて賠償されるべきである。

 

<和解案の理由>

 上小国、下小国、石田、月舘地区は、原発事故以降一貫して伊達市内の他の地域に比し明らかに高線量の傾向にある。申立人らが抱く放射線被爆への恐怖や不安は、通常の自主的避難等対象者が抱いているものよりも現実的かつ具体的であり、しかも格段に大きい。

本件地域内の特定避難勧奨地点の居住者と同一生活圏で活動している申立人らについても、特定避難勧奨地点の居住者に準じた実生活上の様々な制限・制約が生じている。

申立人らが抱いている放射線被爆への恐怖や不安及び実生活上の様々な制限・制約に起因する精神的苦痛は、自主的避難等対象者としての精神的苦痛とは異なるものであって、特定避難勧奨地点の居住者に準じて賠償されるべき損害と考えることが相当。

他方、申立人らの自宅が特定避難勧奨地点の設定を受けなかったこと、伊達市南西部・南東部の中間山地でみられた比較的高い線量は一貫して減少傾向にあること等の事情を併せ考慮した。

 

(和解提示理由書は末尾ダウンロード参照)

 

<和解案のポイント>

当弁護団は、本件審理において、申立人らが高い放射線量により生活上様々な制約(安心して生活ができなくなった、被ばくの不安を抱えている、農業や山菜採りなどができなくなった、子や孫が来なくなった、指定世帯と非指定世帯の間で亀裂が生じコミュニティが崩壊したなど)を受け多大な精神的苦痛を被ったことを各世帯の陳述書、各世帯の線量結果データ、放射線量マップ、地域の特徴などを示す各種資料、現地の様子や当事者の声を撮影した映像(DVD)などを提出し、約10ヶ月もの間主張立証を行ってきました。

これに対して東京電力は、申立人らの住む本件各地域は自主的避難等対象区域であり、申立人らのみが慰謝料の増額を受けることは原子力損害賠償紛争審査会の中間指針追補に反し、不公平だなどと繰り返し主張していました。

そして、平成25年12月20日、上記の通りセンターから本和解案が提示されました。

和解案の内容は、ひとりあたり月額7万円を指定世帯同様の期間、賠償すべきとするものです。自主的避難等対象区域とされる地域において月額あたりの慰謝料を初めて認め、また申立人らの放射線被爆への恐怖や不安及び実生活上の様々な制限・制約を端的に認めた点で大いに評価できるものといえます。

しかしながら、申立人らが求めていたひとりあたり月額10万円には及ばないものです。上記しましたが、申立人ら受けていた多大な精神的苦痛からすれば、そもそも月額10万円という慰謝料の請求は最低限のものであること、今なお様々な生活上の制約が生じていることからすれば、請求金額の減額や賠償対象期間を限定する合理的な理由はなく、和解内容は決して十分なものとはいえません。

 

このように和解案は100%満足のいくものではありません。また、金銭賠償を受けることにより、失われたものが完全に戻るわけでも、被ばくへの不安が完全に解消されるわけでもありません。しかし、申立人らの圧倒的多数は、既に本和解案を受諾することにしています。それは、和解により僅かながらもそれぞれの精神的苦痛が慰謝されること、崩壊したコミュニティが修復されることに期待を寄せたからです。

東京電力は、本和解案の意義、申立人らの心情を十分理解し、すみやかに本和解案を受諾することを強く求めます。

以上

本ニュースのPDFファイル(PDF 160KB)

和解案提案理由書(PDF 208KB)