特定避難勧奨地点指定解除に対する意見

特定避難勧奨地点指定解除に対する意見

 

2012年12月19日

 

原発被災者弁護団

 

政府の原子力災害現地対策本部は12月14日,福島県伊達市と川内村に指定した「特定避難勧奨地点」について,放射線量が減少したとして,全129世帯の指定を同日付で解除しました。

 

しかし,特定避難勧奨地点のある地域全体で除染が完了したわけではなく,線量が高い地点は未だ多数残っているのが現状です。また,局所的に放射線量の高かった場所が除染により一時的に下がったとしても,周囲を囲む山林については全く除染を行っていないことから再び線量が上がる可能性も懸念されています。

そもそも住民は,家やその周辺だけで暮らしているわけではありません。畑,山,勤務先,学校,公共施設,店舗等様々な場所に移動して生活しているのであり,地域全体が除染されなければ安心することはできません。特定避難勧奨地点に指定された家の者も,指定されなかった家の者も放射線量による被ばくの不安を今なお抱え続けています。

そのような中で政府が特定避難勧奨地点の指定を解除したことは,住民の不安及び生活実態から目を背けようとするものに他なりません。また,指定の有無によりコミュニテイが崩壊してしまったという事実を指定の解除によって解消しようとするものですが,住民間の亀裂が解除によって修復されることはあり得ません。特例措置や賠償をなくす方向で公平をはかるのではなく,等しく十分な措置や賠償を認める方向での修復を目指さなければ意味がありません。

政府や地方自治体は狭い地域内において,同じく放射線による不安を抱えているにも関わらず,特定避難勧奨地点の指定という制度により住民を分断した過ちを率直に認めるべきです。そして,特定避難勧奨地点に指定されなかった家の住民にも指定された場合同様の医療費免除等の特例措置を行い,また賠償を適正に行うよう東京電力に求めるべきです。そのような制度自体の見直しをしないままの一方的な解除はさらに愚策を重ねるものといえます。

 

当弁護団は,現在,伊達市霊山町の小国地区,石田地区,月舘町の一部住民から依頼を受け,原子力賠償紛争解決センターを通じて東京電力に対する賠償を求める集団申立を準備しています。11月から12月にかけて既に5日間の相談会を行いました。申立人の規模は1000名を超える見込みです。

これらの地域は町としては避難指示が出されていませんが,町中及び周辺には数多くのホットスポットがあります。住民達は原発事故後,15か月間も放射線の不安に怯え,農業ができない,行動が制限される,家族が分断したなどの精神的苦痛を我々に訴えてきました。

このような住民達の声を政府,各自治体,東京電力は真摯に受け止めることを弁護団として強く求めます。

 

以上