「原発賠償問題現状説明会」及び議員懇談会設置合意のご報告
2012年6月30日
原発被災者弁護団
6月27日,当弁護団は,原発被害救済弁護団(埼玉),双葉町弁護団,ふくしま原発損害賠償弁護団,弁政連福島県支部,辻内琢也早稲田大学准教授,被災者代表の方とともに福島県選出の国会議員の方々に「原発賠償問題の現状説明会」を行いました。
福島選出の与野党国会議員6名(渡部恒三民主党衆議院議員、増子輝彦民主党参議院議員 金子恵美民主党参議院議員、石原洋三郎民主党衆議院議員、森まさこ自民党衆議院議員、小熊慎司みんなの党参議院議員)及び他議員秘書の方々に多数ご参加頂きました。
原発被災者の真の生活再建のためには完全な損害賠償が速やかに実現されることが不可欠であり,そのためには東京電力や原子力損害賠償審査会等の関係機関への働きかけを強める必要があります。そこで,当弁護団としては,このような取り組みのために,国会議員の方々との情報共有及び連携強化が必要だということを訴えました。
他の弁護団からも福島から避難している方の実情,福島県内にいる人の思いや訴えなどを話して頂きました。
辻内准教授からは「原発避難者の受けている甚大な精神的苦痛について-埼玉県における大規模アンケート調査結果から」を報告して頂きました。福島第一原発事故避難者の受けている精神的苦痛が他の災害などと比較しても相当高いレベルにあることが明らかになっているというお話がありました。
また,被災者代表の方は,長引く避難により体調不良になっていること,一番苦しいことのひとつが仕事がないこと,将来の楽しみや夢を全部奪われたことなど辛いお気持ちを話して下さりました。
これらを受けて,福島県選出の与野党国会議員により東京電力福島第1原発事故に伴う賠償推進に関する議員懇談会を設置する合意がなされました。今後,超党派で他の都道府県の議員にも参加を呼びかける方針が確認されています。
当弁護団は,今後とも被災者の声を国に伝えていく努力を続けていきます。
以上
※当弁護団が報告させて頂いた内容は以下の「原発事故 損害賠償 現状の問題」の通りです。
PDFデータはこちら(224KB)
原発事故 損害賠償 現状の問題点
平成24年6月27日
作成担当:原発事故被災者支援弁護団 第1 現在の状況 1 中間指針の基準が事実上の賠償上限と扱われている現実 「中間指針は最低限の賠償基準に過ぎない」との国の当初の理解と程遠い現実 → 中間指針は,その策定時期(平成23年8月)からしても,被災者の被害 実態を十分理解せずに策定された基準であることは明らか。 ※本件事故後の被災者の声や実態調査等から,被害実態との乖離は明白
⇒ 被害実態に即して,国の指針の見直し・変更を行うべき 2 区域の見直しの遅れによる賠償の遅れ ・不動産の賠償基準 区域の見直しの遅れ → 国や東電の賠償基準の公表の遅れ → 賠償の遅れ
・区域の見直しと賠償基準の策定・公表を分離できないか
3 被害の実態や地域の実情に合致しない賠償基準による地域の分断,地域の復 旧・復興の阻害の現実
・旧緊急時避難準備区域 →避難した者と避難しなかった者との不平等 集団申立てを通じて,原発ADRにおいて滞在者慰謝料が認められたこと により,漸くこの不平等が改善される見込みとなった。 → しかしながら,賠償終期問題に関し,賠償の延長を受けられる者とそう でない者との間でさらなる不平等が生じようとしている(第2参照)。
・南相馬市の鹿島区 → 滞在者慰謝料が認められことにより,同市小高区のみならず,同市原町 区とも賠償内容に大きな差が生じることとなった。 ・自主的避難者への賠償問題 原発ADRでも,東電基準と同一の金額しか賠償されていない現状(第3参照) 4 住宅賠償 → 現在の賠償運用および区域の再編と被害実態との乖離 ①再取得価格の問題点 ・経年による減価 → 古い建物ほど適正な賠償を得られなくなる ・リフォーム等により住宅維持の努力 → 現在の賠償運用では無に帰する
※日弁連2012年4月13日付意見書より引用 「被害者は,転居あるいは新規移転先での開業に当たり,建物の 建築コストには新しい建物の取得に要する費用の支出を強いられ ることに鑑み,原則として経年減価を考慮しない再取得価格を基本 とした賠償がなされるべき」 ②帰宅困難区域に指定されなくとも,住宅等の全損を認めるべき 警戒区域等に指定されていた地域は,補修のための立入り等も許されず, これらの地域の多くの被災者の住宅等の建物は,日夜雨風にさらされ,重要 部位が腐食し,家中がカビに覆われる等しており,最早,補修では住宅とし ての機能を有しない状態。 →区域の再編と被災者の欲する賠償内容の乖離の露呈 →区域の再編が被害実態に適合していないことの証左
※日弁連2012年4月13日付意見書より引用 「帰還困難区域の不動産に係る財産価値だけでなく,帰還困難区 域,居住制限区域及び避難指示解除準備区域の建物内に残置された 動産類及び居住制限区域及び避難指示解除準備区域の建物につい ても,被害者が望む場合には,原則として全損として扱うべき」
5 紛争解決機関の設置数・人員不足 →第2で述べる集団申立ての加速により,原紛センターはパンク寸前 【改善策】 ①設置数,人員不足への手当 → 増員等による対応では限界が見えている ②東電による和解仲介案の受諾体制の確立 → 原紛センターの和解仲介案に片面的裁定機能をもたせる法改正 ③東電に対する直接請求の基準の改善 → 直接請求でもある程度納得できるような賠償基準・内容とする ※実質国有化 →実務家等を基準作成に関与させ,東電基準の改善
※これまでの賠償スキームの大幅な変更も検討すべき 被災者・東電・第三者を含めた損害賠償に係る協議機関の設置等 第2 旧緊急時避難準備区域の賠償終期問題
1 中間指針第二次追補の内容(第2-1-(2)の(指針)Ⅲ) 旧緊急時避難準備区域が平成23年9月30日に解除されたことを踏まえ,同 区域における避難費用及び精神的損害の賠償終期を,原則として,「平成24年 8月末までを目安とする。」とされている。 → 賠償打ち切りに対する住民の不安・不満 2 この問題に関する報道 「政府は,中学生以下の子どもがいる世帯に限り,一定額の支払いを継続す るよう,東京電力と調整している」(平成24年6月9日付けNHKニュース) それ以外の住民 → 指針に従い,平成24年8月末で賠償打ち切り方針
※賠償の延長を中学生以下の子供がいる世帯に限定する合理性は皆無 ①住民らが語る「地域の現状」が踏まえられていない ②地域の復興がほど遠い現状(若い年代の住民の流出,教育施設は十分 な教育を提供できていない,病院は医師不足等を抱えている,交通網の復旧 の見通しが立っていない等) ③除染の具体的見通しが未だ立っておらず,滞在者は不安を抱え,避難者は帰 えるに帰れない状況(除染なくして地域の復旧・復興なし) ④中学生以下の子どもがいる世帯とそれ以外を分けることによる住民や地域 の分断,地域の復旧・復興の阻害
3 改善策 ①旧緊急時避難準備区域につき,一律に,東京電力に賠償の延長をさせる →東京電力の任意対応では,賠償打ち切りについて住民らの不安は拭えない ②国の指針の内容の変更 → 「現時点では,賠償終期を定めない」
4 「南相馬原町区の住民主体の賠償終期問題等に関するシンポジウム」開催 ・日時:平成24年7月1日(日)13:15~16:00 ・主催:原町区区長連絡協議会 後援:南相馬市
第3 集団申立ての動向
1 現時点の集団申立ての状況 ・南相馬市原町区案件(主に旧緊急時避難準備区域) 平成24年6月4日時点で,合計311世帯1014名 ※平成23年12月の集団申立て(34世帯,130名)は含まない 2 今後の予定 ・南相馬市原町区 500人以上から受任済み 7~9月末頃申立予定 ・南相馬市小高区 1000人以上から受任済み 6~8月末頃申立予定 ・飯舘村長泥地区 200名程度から受任 6月末以降申立予定
※多くの住民に相談会開催,受任,申立てをそれぞれ待ってもらっている状態
第4 自主的避難者への賠償の問題点 ・ 中間指針追補の内容とは異なる和解案 「個別具体的な事情に応じた相当因果関係のある損害」について考慮がない。 以 上 |