【報告】南相馬市住民12月集団申立の件 進行状況

南相馬集団申立事件の進行状況に関するご報告

2012年4月12日

原発被災者支援弁護団

原発被災者支援弁護団が,平成23年12月28日に,南相馬市の住民34世帯130人を代理して,避難費用,一時立入費用,減収損害,不動産損害及び慰謝料等の賠償を求め,原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立てを行った件につきまして,その後の進行状況をご報告します。

 

第1 南相馬市内において,申立人が被害状況を述べる手続の実施
平成24年3月4日,南相馬市民文化会館において,申立人が,本件和解仲介手続を担当する仲介委員の前で被害状況を述べる手続が行われました。申立人34世帯のうち25世帯の方にご参加いただき,原発事故以来のご苦労,ご心痛を切々と語っていただきました。以下は,ほんの一例です。
・ 事故直後に避難した先の体育館は,十分な暖房器具がないため非常に寒く,トイレが近くなったが,周囲の方にご迷惑をかけないよう水分を摂らずに我慢していたため,疲れきってしまった。
・ 帰宅したものの,畑仕事・散歩等ができなくなったため,生活のはりがなくなり,気持ちが落ち込み,寝込むことが多くなった。
・ 子どもへの影響を考え家族と離れて避難を継続しているが、避難先では相談できる相手もおらず,今後のことを考えると不安で眠れない。
・ 本当は娘を連れて避難したかったが,親類が津波事故で行方不明になったため,避難できなかった。

 

第2 主要な争点についての審理の状況
本件手続において,申立人に共通する争点は,次の3点です。
1 避難中の一時帰宅費用のうちどの範囲を損害として認めるか。
2 これまで米や野菜等を自家消費されていた方が,本件事故後に米や野菜等を店舗等で購入せざるを得なくなった場合に,その購入費を慰謝料とは別の損害として認めるか。
3 避難されていない方及び避難後帰宅された方の慰謝料額

 

この3つの争点についての審理の状況は,次のとおりです。

1 争点1(一時帰宅費用の範囲)について
東京電力は,自社で定めた基準(例えば月1回の一時帰宅費用のみ認め,2回目以降の一時帰宅費用は損害として認めない。)を主張していましたが,家の安全やペットの様子等を確認するのが月1回で足りるはずはないし,地域団体等の理事等は地元の復興のための会議出席等頻繁に一時帰宅する必要があったことを主張したところ,仲介委員から東京電力の基準には合理性がない旨の指摘があり,東京電力も同基準にこだわらないとの立場に変更しました。

 

 2 争点2(自家消費に係る損害)について
東京電力は中間指針を根拠に,自家消費に係る生活費増加分は慰謝料に含まれると主張していましたが,3月4日の手続において,申立人の大多数が事故前は野菜等を買ったことがないとお話しされたことから,東京電力も「合理的な額」について,慰謝料とは別の損害となることを認めるに至りました。

 

3 争点3(避難していない方,避難後帰宅した方の慰謝料額)について
東京電力は,原則として,中間指針が定める平成23年4月22日分までの慰謝料(総額10万円)以外には認めないと主張していました。
これに対し,申立人は,3月4日の手続に加え,南相馬市等の人口が大きく減少し,地域医療が崩壊し,二次救急体制が形骸化したこと,小中学校が1年近く間借りを余儀なくされ,授業や屋外活動が制約されたこと,店舗が再開されなかったり,再開後に閉店したことにより生活基盤が喪失し,不安や不便を感じ,今後にも不安を感じていることを主張立証しました。
仲介委員は,申立人の主張立証を踏まえ,東京電力主張の金額を超える慰謝料の支払いを認めるのが相当との見解を示すとともに,東京電力に対し慎重に検討するよう指示しました。このため,和解案が提示される予定であった3月28日の口頭審理期日は,取り消されました。

 

第3 今後の予定(仲介委員からの和解案の提示)
4月16日午前10時からの口頭審理期日において,仲介委員から和解案が示されることになっています。和解案が発表され次第,弁護団でもその内容を公表する予定です。

以   上

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