【報告】一部先行払い和解案についての報告及び声明

平成24年2月28日

一部先行払い和解案についての報告及び声明

東日本大震災による原発被災者弁護団

 

当弁護団が平成23年10月に原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた和解仲介手続事件(大熊町、福島第一原発から約4.5キロ圏から避難した方)につき、平成24年2月14日、同センターの仲介委員から、争いのない営業損害部分(169万8245円)について東京電力に賠償を求める一部先行払い和解案が示されました。しかし、本日時点で東京電力は、同和解案をそのままの形で受け入れることに同意していません。

以下、同和解案の内容及びその後の経緯等について報告させて頂きます。

 

1 和解案の内容について

当弁護団は、本和解仲介手続の中で、申立人が本件事故によって仕事を失い収入が途絶えている状態にあることから、申立人の生活再建のための十分な賠償と早期の支払を求めてきました。これを受けて、同センターの仲介委員から、申立人と東京電力の双方に争いのない損害部分について、一部先行して賠償金を支払うようにとの和解案が示されました。その主な内容は以下のとおりです。

⑴ 東京電力は申立人に対し、争いのない損害部分について一部先行して賠償金を支払うこと。

⑵ 本和解を受けても、申立人の他の損害部分の賠償金には影響を及ぼさないこと。

⑶ 上記賠償金の支払時点では、既に受け取っている仮払補償金を控除しないこと。

以上のとおり、本和解案は申立人の生活再建のために早期の支払を実現する点及び仮払補償金の控除をしないという点で評価できるものと考えております。

 

2 東京電力の回答について

ところが、平成24年2月15日、東京電力から本和解案の一部修正を求める意見書が提出されました。その内容は、「今回の和解では、賠償金から仮払補償金の控除をしないことを認めるが、次回賠償金を支払う際には仮払補償金の控除をすることを約束してもらいたい」というものでした。

 

3 当弁護団の反対意見について

将来どのような賠償がなされるか分からない現段階で仮払補償金の控除を認めることは到底できません。東京電力のこの要求は、事実上、本和解案を拒絶するものといえます。そこで、当弁護団は同要求に対し、次のとおり反対意見を述べました。

⑴ 東京電力は、特別事業計画の中で同センターの和解案尊重を約束しているにもかかわらず、上記のような要求することは同約束に反すること。

⑵ 東京電力の要求は、申立人の生活再建のための早期賠償を目指した本和解案提示の趣旨に反すること。

⑶ 次回の賠償金支払いがどのような内容になるか分からない現時点で、仮払補償金の 控除には到底応じられないこと。

⑷ そもそも仮払補償金を無条件で控除すべきではないこと。

 

4 同センターから東京電力に対する再検討の要請について

当弁護団の上記反対意見を受けて、同センターの仲介委員は東京電力に対し、改めて以下のような要請を行いました。

⑴ 本和解は経済的苦境からの申立人の救済という趣旨で進めているものであり、次回支払時における仮払補償金の控除という東京電力の要求は、その趣旨に反すること。

⑵ 東京電力の同控除の要求は、東京電力が定めた「特別事業計画」の「仲介案尊重」、「部分的な和解の受け入れ」、「支払いの迅速化」の各声明と矛盾すること。

⑶ よって、同控除の要求については再度検討すべきであること。

同センターの仲介委員による上記要請は、東京電力側の対応を非難し、同社の要求の撤回を求め、本和解案の早期受諾を求めるものであり、被災者に対する賠償を後押しするものと考えられます。

 

東京電力には、本和解案及び上記仲介委員の要請を尊重し、本和解案の受諾及び被災者に対する早期の適正な賠償を行うことを強く求めます。

 

 

 

PDFデータはこちら(124KB)