福島市大波地区,伊達市雪内・谷津地区の東電和解案拒否打切りについて

福島市大波・雪内地区の集団ADR申立て(申立人は409世帯・1241名/申立時点 以下「当初申立」という)において、原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」)は、令和元年7月5日、米農家30世帯に対し1世帯30万円の慰謝料の支払を認めるという和解案(以下「本件和解案」という)を提示した。これに対し、被申立人は、同年8月5日付回答書で、本件和解案の受諾を拒否した。そこで、センターは同年10月31日付勧告書で、被申立人に対し、再度本件和解案の受諾を勧告したが、被申立人は同年11月26日回答書で再度本件和解案受諾を拒否した。

 このような東京電力の対応を受け、センターは、令和1年12月25日付けで、和解仲介手続を打ち切る旨の通知を行った。

 当初申立に対し、センターは、慰謝料の支払いを認めなかった。本件和解案でおいて認定した事実を基にすれば、慰謝料の支払いは認められたはずである。したがって、このセンターの判断については、申立人及び当弁護団は、全く納得していない。しかし、不十分ではあるが、センターが米農家に対し、慰謝料として30万円の支払いを認めたことは評価できる。

ところが、被申立人は、この本件和解案すら拒否をした。その理由は、要するに、これまでの被申立人の主張と相容れないからということに尽きる。国は、準司法機関たるセンターを設け、原子力損害賠償紛争の早期解決をはかった。この設立の趣旨を踏まえれば、当事者がセンターにおいて主張立証した上でセンターが示した和解案は、自らの主張と異なるものであっても尊重されなければならない。被申立人も、累次の総合特別事業計画において《センターの和解案を尊重する》旨を繰り返し誓約している。

本件和解案拒否は、この誓約を反故にするものである。被申立人の態度は、自説に固執し、これに反する和解案は、何が何でも拒否するというものであり、極めて横暴である。このような態度が続けば、センターの紛争解決機能は失われてしまう。

被申立人は、自らが引き起こした原発事故により、中間指針では救済できない被害があることを素直に認めるべきである。そして、センターの和解案を尊重すると誓約した以上、本件和解案を受諾すべきである。当弁護団は、本件和解案受諾を拒否する被申立人に厳重に抗議する。

国も、準司法機関たるセンターを設けた趣旨を踏みにじる被申立人の行動を傍観するのではなく、原子力損害賠償紛争の実質的な解決ができるように積極的な役割を果たすことを求める。

以上