【報告】 都路町訴訟第20回口頭弁論期日等について

【報告】 都路町訴訟第20回口頭弁論期日等について

 

1 第20回口頭弁論期日について

令和元年8月20日(金)午後2時,福島地方裁判所郡山支部303法廷において,第20回都路町訴訟口頭弁論が開かれました。

 

2 主張書面の概要について

⑴ 原告が提出した原告第70準備書面から第77準備書面の内容は,次のとおりです。

(原告第70準備書面)

結果回避についての専門家証人(筒井哲郎・後藤政志氏)に対する反対尋問で出てきた論点について主張するもので,両証人が意見書で主張する対策は,過去の実績や施工可能期間からいっても十分に可能であったと主張するものです。

(原告第71準備書面)

本件事故は津波でなく地震であると主張する専門家証人(木村俊雄氏)の尋問結果を踏まえ,被告らの主張は根拠を欠くものであること,また,過去の溢水事故の経験からすれば被告東電は取るべき対策をとっていなかったと主張するものです。

(原告第72準備書面)

被告東電に対して規制権限を行使すべきほどの予見可能性はなかった,規制権限行使は違法となる可能性があったとの被告国の主張に対して,津波を予見する知見には十分な科学的根拠があり,規制権限行使は違法とはならないと反論するものです。

(原告第73準備書面)

結果回避についての専門家証人(吉岡律夫氏)の主張を,非現実的なものなどと批判する被告国の主張について,吉岡証人の描く結果回避のシナリオが十分に現実的なものであると反論するものです。

(原告第74準備書面)

被告東電が手順書どおりの対応をとらなかった過失について,手順書通りに冷却措置を施すことや,手順書通りに動く訓練を行っていれば本件事故を防げた旨を補充主張するものです。

(原告第75準備書面)

低線量被ばくが人体に及ぼす危険性に関する理論(LNTモデル)について,根拠のないものとする被告らの主張に対し,国際的な多数の研究結果がLNTモデルを実証しており,被告らの批判はあたらないと主張するものです。

(原告第76準備書面)

都路地区の被害状況について,生活に困難にする程度には至っていないと主張する被告東電の反論に対して,被告らの空間線量モニタリング結果の理解は誤っていること,土壌調査の結果,その結果をチェルノブイリ法の基準にあてはめた場合に都路地区の大多数の地点が避難の権利を認めるべき水準にあることを踏まえれば,被告東電の批判は失当であること等を主張するものです。

(原告第77準備書面)

被告国の損害総論(被告国第24準備書面)についての考え方を批判するもので,中間指針はあくまでも迅速な救済に重きを置いた限定された状況でのみ合理性を有する規範にすぎず裁判規範にはなり得ないこと,被告国は被災者との関係では被告東電と同等・同質の責任を負うべきこと,低線量被曝への健康不安も賠償されるべき被害にあたるべきこと等を主張するものです。

 

⑵ 被告国が提出した第31準備書面及び第32準備書面の内容は,次のとおりです。

(被告国第31準備書面)

予見可能性・規制権限行使に関する書面で,刑事裁判で問題になった,東電の現場と管理部門とで防潮堤の必要性に関する議論がなされていた事実があるからといって,予見可能性は肯定されず,被告国が規制権限を行使すべき根拠にはならないと主張するものです。

(被告国第32準備書面)

結果回避に関する書面で,吉岡証人の原子力発電関連設備の水密化等に関する主張は不合理であると主張するものです。

 

⑶ 被告東電が提出した準備書面(26)の内容は,次のとおりです。

(被告東電準備書面(26))

筒井・後藤証人の主張に対する批判で,本件原発の実情からすれば両証人の主張する結果可否措置は現実的・技術的に困難であると主張するものです(当期日で提出した原告第70準備書面で反論済)

 

3 原告の意見陳述について

原告の1人が,法廷で,避難生活の苦労や,都路でできなくなってしまった山菜取りなどについて意見を述べました。なお、次回期日からは証人尋問・本人尋問に入るため、意見陳述は中断になります。

 

4 進行協議期日について

今後の主張立証につき,進行スケジュールの確認をしました。

原告からは,概ね主張及び被告国の主張への反論は終了しているが,必要なものがあれば追加で行うことと被告東電の主張で反論が未了になっているものへの反論を行っていく旨を述べました。また、陳述書は引き続き出していく予定である旨を述べました。

被告国及び被告東電は,原告の準備書面のうち積み残しの反論をしていく旨を述べました。

また,原告が行った専門家証人の尋問申請のうち,早尻正宏証人(北海学園大学准教授)と石井秀樹証人(福島大学准教授)、岡本孝司証人(東京大学教授)については採用し,他の者の採否は次回以降に決定する。なお、岡本孝司証人(東京大学教授)については,原告の尋問は実質的には反対尋問であると理解しているので、被告国においても尋問申請するかを検討するように裁判所が指示をしました。

 

5 今後の期日について

令和元年10月18日(金)13時30分~

令和元年12月12日(木)10時~

令和2年2月13日(木)10時~

令和2年4月23日(木)10時~

令和2年5月20日(水)開始時間未定。なお、水戸地方裁判所で実施する可能性あり。

令和2年7月3日(金):10時~

*場所は、未定となっている令和2年5月20日を除き,いずれも福島地方裁判所郡山支部303号法廷です。

 

【本件についての問合せ先】

原発被災者弁護団都路町担当 弁護士 林 浩靖(03-6912-9271)