1 鹿島区訴訟とは
鹿島区訴訟は、南相馬市鹿島区の住民(30㎞圏外で、政府による避難指示区域外であるが、「地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域」として中間指針の対象区域となっている地域)が原告となり、国と東京電力を被告として、一人当たり660万円の慰謝料等の支払いを求めている訴訟です。現在133世帯329名が原告として参加し、福島地方裁判所で審理されています。
2 第18回口頭弁論期日の内容
(1)日時
令和元年7月10日(水)午後2時、福島地方裁判所203号法廷(大法廷)において、第18回鹿島区訴訟口頭弁論期日が開かれました。
(2)原告提出書面について
① 原告第51準備書面(被告らの隠蔽体質とその行為の悪質性)
[内容]被告東電と被告国の双方が事故前から根深い隠蔽体質を有し,これにより原子力行政が歪められたばかりか,事故後も同様に隠蔽を繰り返す対応を続けており,被告らには極めて強い非難がなされるべきことの主張。
② 原告第52準備書面(IAEA事務局長報告書に関する被告らの主張に対する反論)
[内容]IAEA事務局長報告書について,行為規範たり得ないなどとする被告国の主張には根拠がないことを明らかにする主張。
③ 原告第53準備書面(低線量被ばくによる精神的損害)
[内容]低線量被ばくに関する科学的知見からすると,年間1mSv以上の被ばくを原告らに受忍させることは許されないことを明らかにする主張。
④ 原告第54準備書面(福島県18歳以下住民における甲状腺ガン多発)
[内容]福島県内では事故当時18歳以下の年齢層で,放射線被ばくの影響と考えられる甲状腺ガン多発が検出されており,このことからすると,鹿島区住民が避難先からすぐに帰宅しなかったことが合理的であり,帰宅した者は具体的な不安を有している旨の主張。
⑤ 原告第55準備書面(放射線による細胞のガン化のメカニズム面からも,LNTモデルが妥当であること)
[内容]原告第53準備書面における主張の裏付けとして,低線量であってもガン化の効率自体は変わらないことの主張。
⑥ 原告第56準備書面(LSS14からも20mGy超での全固形ガン死亡リスクの増加については「高度の蓋然性」が認められること)
[内容]最高裁が民事訴訟の立証の程度として求める「高度の蓋然性」とは概ね7~8割程度を越える確率で真実であることであり,20mGy超では全固形ガン死亡リスクが増加することには「高度の蓋然性」が優に認められることの主張。
⑦ 原告第57準備書面(本件事故後の経緯に鑑みて,原告らの被害は現在も継続していること)
[内容]鹿島区では賠償が2011年9月末をもって打ち切られたが,現在も原発事故は収束したとは言えず,原告らは被告らの場当たり的対応に翻弄され続けており,原告らの被害が今なお続いていることの主張。
⑧ 原告第58準備書面(今村文彦尋問結果を踏まえた補充主張)
[内容]被告国が提出した意見書の執筆者である今村文彦氏の東電元役員刑事事件における尋問を踏まえ,被告国の主張には理由がないことを指摘するもの。
⑨ 原告第59準備書面(耐震バックチェックを巡る被告東電社内の動きから分かること)
[内容]耐震バックチェックに関する被告東電の動きからは,「長期評価」に十分な信頼性が認められ,にもかかわらず対応を抵抗した被告東電の悪質性は重大であり,被告国が耐震バックチェックの進捗管理を行っていれば本件事故は回避できたことの主張。
(3)国提出書面について
① 被告国第25準備書面
[内容]長期評価の見解につき,原告第47準備書面及び原告第48準備書面に対する被告国の反論。
(4)東電提出書面
① 被告東京電力準備書面(17)(原告第38準備書面に対する反論)
[内容]仙台地方裁判所に係属中の訴訟における田辺文也証人の意見に基づき,事故時運転操作手順書違反を指摘する原告第38準備書面に対する被告東電の反論。
(5)意見陳述等について
① 原告第56準備書面要旨(林弁護士)
② 原告第58準備書面要旨(尾渡弁護士)
3 今後の日程について
2019年11月8日(金)14時 鹿島区訴訟第19回口頭弁論期日(203号法廷)
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マザーシップ法律事務所 弁護士 内田 明
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