【報告】福島市渡利集団ADR申立てで,東京電力がセンターの和解案に対し再度の拒否回答

【報告】福島市渡利集団ADR申立てで,

東京電力がセンターの和解案に対し再度の拒否回答

原発被災者弁護団

2018.10.30

 

2018年10月17日付けニュースでご報告しましたように,福島市渡利地区の集団ADR申立て(申立人は1107世帯・3107名/申立時点)について,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」)は,渡利地区内で特定避難勧奨地点の設定が検討されたと推認される各地点(合計2地点)を中心に半径500メートルの範囲内にあると認められる申立人に,1人あたり金10万円の慰謝料を支払うべきとする和解案骨子を同年6月7日に提示しましたが,同年7月31日,東京電力側が和解案骨子の受諾を拒否したことを受け,同年10月15日付けで,担当仲介委員による「和解案提示理由書」を提示し,東京電力に再度の回答を求めていました。

 

しかし,東京電力側は,平成30年10月29日付けで回答書を提出し,和解案を受諾することはできないと,再度の拒否回答を行いました。

東京電力の回答書は,センターの和解案提示理由書に反論し,渡利地区の線量によって,申立人らに慰謝料増額を基礎付けるような法益侵害が発生したと考えることはできない,年間20ミリシーベルトの被ばくの健康リスクは,他の発がん要因によるリスクと比べても十分低い水準にある,渡利地区の2地点が特定避難勧奨地点の候補地に検討されたことによって,和解案が対象範囲とした申立人らに慰謝料増額を基礎付けるような法益侵害が発生したと考えることはできない,等と述べるものです。

 

本件原発事故による多数の紛争を迅速かつ適正に解決するために設置された国の紛争解決機関である原子力損害賠償紛争解決センターの仲介委員が,対象範囲の申立人らについて,放射線被ばくに対する不安・恐怖を抱くことは合理的であり,そのような不安・恐怖に対して,また,被ばくを避けるための日常生活生活上の制限や制約に対して,東京電力は賠償すべきであると認定し,和解案を提示しているにもかかわらず,東京電力の回答は,あくまで自社の見解に固執するものです。

東京電力は,多額の賠償金の原資について国から援助を受けるために国に提出した累次の総合特別事業計画において,《センターの和解案を尊重する》旨を繰り返し誓約しています。東京電力がセンターの和解案を尊重することが,本件原発事故の賠償スキームの前提となっているにもかかわらず,東京電力がこのように自社の見解に固執し,センターの和解案の受諾を拒否するのでは,センターの存在意義は画餅に帰します。

 

当弁護団は,東京電力が,本件原発事故の加害者としての立場を自覚せず,自社の見解に固執し,自ら繰り返し《センターの和解案の尊重》を誓約しているところに反し,センターが示した和解案を再度拒否したことに対し,厳重に抗議します。

 

本件についての問い合せ先:

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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