【報告】福島市渡利集団ADR申立てで,センターが「和解案提示理由書」を示す

【報告】福島市渡利集団ADR申立てで,センターが「和解案提示理由書」を示す

原発被災者弁護団

2018.10.17

 

2018年8月3日付けニュースでご報告しましたように,福島市渡利地区の集団ADR申立て(申立人は1107世帯・3107名/申立時点)について,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」)が,同年6月7日に,渡利地区内で特定避難勧奨地点の設定が検討されたと推認される各地点(合計2地点)を中心に半径500メートルの範囲内にあると認められる申立人に,1人あたり金10万円の慰謝料を支払うべきとする和解案骨子を提示しましたが,同年7月31日,東京電力側は和解案骨子の受諾を拒否しました。

 

その後,センターの方で対応を検討していましたが,平成30年10月15日付けで,担当仲介委員による「和解案提示理由書」が双方に示されました。

 

和解案提示理由書」(←クリックするとPDFファイルで閲覧できます)では,申立人らの間では,本件原発事故当初の時期から,報道等を通じ,福島市の他の地域の住民と比較しても強い不安や恐怖が醸成されていたこと,とりわけ,特定避難勧奨地点の設定が検討された2地点(毎時3.0μSv/h以上を観測)の近隣に継続して居住していた一定の範囲(半径500m以内)の申立人らは,平成23年10月8日の住民説明会によって,特定避難勧奨地点に設定されるほどの線量を有する地点の近隣で継続的に居住していた事実を突きつけられ,強い衝撃を受けたことが容易に推認できることを指摘しています。

そして,かかる衝撃を受けた一定の範囲の申立人らが,特に強く放射線被ばくに対する不安や恐怖を抱くことも合理的であり,その不安や恐怖は,前記住民説明会後に抽象的なものから具体的,現実的なものへと変質したといえる,としました。

さらに,このような一定の範囲の申立人らの抱いた不安や恐怖に伴う日常生活上の制限や制約は,特定避難勧奨地点が設定された場合における日常生活上の制限や制約に準じるものがあると考えられ,特定避難勧奨地点の居住者に準じて賠償されるのが相当である,としました。

 

センターは,東京電力に対し,かかる和解案提示理由書を踏まえて,10月29日までに,再度和解案についての受諾の可否を回答するように求めました。

なお,センターが現時点で和解案の対象としているのは,172世帯・482名であることも和解案提示理由書の別紙目録で明らかになりました(この世帯数・人数は,和解案骨子を双方が受諾した後に,双方の個別の主張・立証により増減する可能性が留保されています)。

 

当弁護団は,東京電力に対し,本件原発事故の加害者としての立場を自覚し,自社の見解に固執することなく,政府に提出した累次の「総合特別事業計画」中で自ら繰り返し《センターの和解案の尊重》を誓約しているところに従い,センターが示した和解案提示理由を十分尊重し,和解案骨子を受諾するように改めて求めます。

 

本件についての問い合せ先:

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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