【報告】 都路町訴訟第13回口頭弁論期日等について

1 第13回口頭弁論期日について

平成30年6月22日(金)午後2時,福島地方裁判所郡山支部303法廷において,第13回都路町訴訟口頭弁論が開かれました。

 

2 主張書面の概要等について

  1. 原告

原告が提出した原告第40準備書面から同第45準備書面の内容は,次のとおりです。

(原告第40準備書面)

国及び東京電力の津波対策におけるが認められることについては,既に原告の第19準備書面(結果回避措置について)を含む多数の準備書面を提出して十分に論じてきましたが,前橋地裁(平成29年3月17日),福島地裁(平成29年10月10日),京都地裁(平成30年3月15日),東京地裁(平成30年3月16日)と複数の裁判所の判決でも国及び東京電力の過失が肯定されたことから,これら複数の地裁判決を踏まえた更なる主張の補充,及び被告東電に対する反論を行いました。

(原告第41準備書面)

原告は,第4準備書面,第15準備書面で,福島第一原発1号機が津波襲来前から地震によって損傷しており,それが本件事故原因の一つであることを主張してきましたが,その後の観測データの分析などの研究結果から,さらに2号機の圧力抑制室底部が本件地震によって破損していたこと,及び同室底部に接続する配管の破損が2号機のRCIC(原子炉隔離時冷却系)が停止する原因となる等の影響が生じたことを明らかにした上で,今回の地震が予見可能であり,東京電力らには圧力抑制室底部の配管が破損しないように対策を講じる義務があったことなどを論じています。

(原告第42準備書面)

原告は,国の第17準備書面に対する反論を含め,国が福島第一原発に到来する可能性のある津波の高さを自ら試算し,あるいは東京電力に命じて試算をさせる義務があること,国は長期評価に基づいて福島第一原発に襲来する可能性のある津波の高さの試算を容易に行えたこと,経済産業大臣が結果回避のための措置を講じるまでに長期間を要するとは言えず,少なくとも今回の事故発生までには必要十分な経過回避措置を講じることができたなどを主張しています。

(原告第43準備書面)

国の第19準備書面での求釈明に対して,原告が結果回避措置を講じるに当たって想定している津波の高さは,防潮堤の設置については15.7メートルであり,その他の措置に関してはO.P.+10メートを越えて原発施設敷地に到来するものを想定している旨回答しました。

(原告第44準備書面)

原告は,原発1号機ICの内側隔離弁の手動操作化の対策を講じるべき法的義務はなかったとの被告東電準備書面(13)に対する反論を行いました。具体的には,原発1号機に設置されたICの機能に鑑みると,電源喪失時に速やかに手動で弁の開操作をする必要があり,被告東京電力には,全電源喪失時にIC内側隔離弁の手動操作化の機構を具備した上,人員配置,シミュレーションによる運転員の訓練を行う義務があり,かかる義務を履行すれば,本件事故を回避することができた等の反論を行いました。

(原告第45準備書面)

原告は,福島第一原発において,事故が発生した場合に取るべき対応を規定した事故時運転操作手順書が配置されていたものの,東電は,同手順書に従い事故時の訓練,及び体制整備を行う義務を怠っていたため,本件事故時に同手順書で定めた遵守義務を履行できず,原告らに生じた損害を賠償すべき義務があることを,第1号機ないし3号機について個別かつ詳細に主張しました。

 

(2)被告国から提出された第21及び第22準備書面の内容は以下のとおりです。

(第21準備書面)

国は,①推進本部は,長期評価の公表に当たり,長期評価の内容を決定論的に直ちに規制や防災対策に取り組むべきとの趣旨があったわけではないこと,②国(保安院)は,長期評価の公表後の平成14年8月に東電にヒヤリングを行い,東電から長期評価を決定論ではなく確率論で取り扱っていく方針であるとの報告を受け,それを了承しており,これは理学的にも工学的にも正当な対応であったこと,③事故前の工学的知見に照らし,結果回避措置として,津波が敷地高さを上回る具体的箇所に限定して防潮堤・防波堤等を設置することによってドライサイトを維持するという考え方が合理性を有することを述べ,これまでの主張を補足しています。

(第22準備書面)

被告国は,原告が立証の中核の一つにしている国会事故調査報告書には根拠となる資料が不明確で,内容にあやまりや不正確なところが複数箇所あると指摘しています。そして,それらのあやまった箇所に基づく原告の主張を否定するとともに,裁判所に対し,国会事故調査報告書の内容について,信用性・合理性を精査することを求めています。

 

(3)被告東電が提出した準備書面(17)及び(18)の内容は以下のとおりです。

(準備書面17)

東電は,中間指針等に基づく精神的損害の賠償の考え方について独自に整理し,これまで東電が公表している賠償の考え方と賠償金額の水準が中間指針等の基準に照らして合理的なものである,と主張しています。

(準備書面18)

被告東電は,①放射線の健康影響に関する科学的知見等の情報を独自に整理し,原告らが現実に被ったと考えられる被ばく量は年間20ミリシーベルトを大きく下回るものと推測できること,②また被告東電が独自に整理した放射線の健康影響に関する科学的知見等の情報は,本件事故発生直後より,福島県内の住民は容易に知ることができる状

態にあり,自主的避難をするかどうか検討するなどこれらの情報に関心のある者は,放射線の健康影響に関する科学的知見を容易に知ることは十分に可能な状態にあった,などと主張しています。

 

3 原告の意見陳述について

原告の1人が,法廷で事故前の生活,事故による避難や被った苦しみ,事故によって失った仕事や都路への思いについて意見を述べました。

 

4 進行協議期日について

  1. 原告は今回提出された被告国及び被告東電の反論を行う。立証準備関係では,陳述書と木村俊雄氏(甲B第40号証)の尋問を予定している。但し,他の訴訟で先に木村氏の尋問が行われれば,尋問調書を提出する。被告国は6月の期日を除いて2回で反論を行う。被告東電は回数不詳で順次反論する。被告東電は損害総論について並行して反論を行う旨を述べました。
  2. 各世帯の陳述書について,原告が本期日で提出したサンプルをもとに,裁判所に意見を求めたところ,今後,当事者及び裁判所で検討していくが,被告らには,尋問の必要性の観点から,反対尋問で確認が必要な事実を検討するようにとの指示がありました。

 

5 今後の期日について

    1. 平成30年8月22日(水)14時~
    2. 同年11月2日(金)14時~
    3. 同年12月21日(金)14時~
    4. 平成31年3月1日(金)14時~

*場所はいずれも福島地方裁判所郡山支部303号法廷です。

 

【本件についての問合せ先】

原発被災者弁護団都路町担当 弁護士 林 浩靖(03-6912-9271)