【報告】飯舘村蕨平・比曽の集団ADR申立てで,東京電力の和解案拒否により,和解仲介手続打ち切り
2018.5.31
本年5月21日付けニュースでご報告していましたように,飯舘村蕨平集団申立て(H25.1申立て)及び飯舘村比曽集団申立て(H26.11申立て)について,原子力損害賠償紛争解決センターが,東京電力に対し,被ばく不安慰謝料を内容とする和解案についての最終回答を求めたのに対し,東京電力は,5月19日,両集団申立てのいずれについても,被ばく不安慰謝料を内容とする和解案の受諾を拒否する旨の回答を書面で行っていました。
これを受け,センターは,飯舘村蕨平集団申立て・比曽集団申立てについて,東京電力の和解案拒否を理由に,和解仲介手続の継続が困難であるとして,和解仲介手続を打ち切るとの決定を5月28日付けで行い,5月29日に弁護団に通知がありました。
当弁護団はこれを受け,5月30日に記者会見を行いました。
センターは,和解仲介手続打ち切りを受けて,センターのホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/1403177.htm)
にて,飯舘村蕨平集団申立て・比曽集団申立てにおける和解案提示理由書等を公表しました。
センターは,飯舘村蕨平集団申立てにおいては,本件原発事故後の初期において飯舘村に留まっていた申立人について,相当程度の放射線被ばくを受けたと考えられることから,被ばくによる健康等の不安について,大人1人50万円,妊婦又は18歳以下の子ども1人100万円の慰謝料の支払を東京電力に求めていました。
合計26世帯,大人78名,妊婦・子ども9名について,合計4800万円の和解案が提示されていました。
センターは,飯舘村比曽集団申立てにおいても,同様に,本件原発事故後の初期における被ばくによる健康等の不安について,大人1人40万円,妊婦又は18歳以下の子ども1人80万円の慰謝料の支払を東京電力に求めていました。
合計53世帯,大人148名,妊婦・子ども29名について,合計8240万円の和解案が提示されていました。
センターの仲介委員が,申立人の皆さんのお話を直接聞き,あるいは陳述書という形で聞いて,現実の両地区の放射線量等についての多数の客観的証拠も踏まえて提示したこれらの和解案が,東京電力の拒否により,成立に至らなかったということになります。
東京電力は,自ら,政府に提出した累次の総合特別事業計画において,「被害者へのお約束」として,《センターの和解案を尊重する》と誓約し,公表しています。東京電力が国から賠償金の原資の援助を受けるにあたって,国が設置するセンターが提示した和解案は尊重し,紛争の早期解決を図ることが賠償の枠組みの前提となっていたものです。にもかかわらず,東京電力は,表向きの態度とは別に,実際の紛争においては,センターの度重なる説得にも耳を貸さず,被ばく不安慰謝料を支払うべきというセンターの和解案を拒否し続け,最終的に和解仲介手続の打ち切りに至ったものです。
このような東京電力の不誠実な対応は,社会的に厳しく非難されるべきです。
また,このような東京電力の和解案拒否を許したのでは,センターの紛争解決機能は著しく損なわれ,多数の被害者が訴訟を起こさなくても迅速に救済を受けられるように設立されたセンターの制度趣旨が根本から揺らぐこととなります。
当弁護団は,引き続き,この問題に取り組んでいきます。
本件についての問い合せ先:
弁護士 秋山直人(03-3580-3269)
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