【報告】飯舘村蕨平・比曽の集団ADR。東電が被ばく不安慰謝料の和解案,拒否の最終回答

【報告】飯舘村蕨平・比曽の集団ADR申立てで,東京電力が被ばく不安慰謝料の和解案に対する最終回答で和解案を拒否

 

2018.5.21

 

本年4月19日付けニュースでご報告していましたように,飯舘村蕨平集団申立て(H25.1申立て)及び飯舘村比曽集団申立て(H26.11申立て)について,原子力損害賠償紛争解決センターは,東京電力に対し,被ばく不安慰謝料を内容とする和解案について,同年5月18日までに最終回答をするように求めていました。

東京電力は,5月19日,両集団申立てのいずれについても,被ばく不安慰謝料を内容とする和解案の受諾を拒否する旨の回答を書面で行いました。

 

センターは,飯舘村蕨平集団申立てにおいては,本件原発事故後の初期において飯舘村に留まっていた申立人について,相当程度の放射線被ばくを受けたと考えられることから,被ばくによる健康等の不安について,大人1人50万円,妊婦又は18歳以下の子ども1人100万円の慰謝料の支払を東京電力に求めていました。

合計26世帯,大人78名,妊婦・子ども9名について,合計4800万円の和解案が提示されていました。

 

センターは,飯舘村比曽集団申立てにおいても,同様に,本件原発事故後の初期における被ばくによる健康等の不安について,大人1人40万円,妊婦又は18歳以下の子ども1人80万円の慰謝料の支払を東京電力に求めていました。

合計53世帯,大人148名,妊婦・子ども29名について,合計8240万円の和解案が提示されていました。

 

東京電力は,先行した飯舘村長泥集団申立てにおいては,蕨平集団申立てと同様の水準による被ばく不安慰謝料を内容とする和解案を受諾しているにもかかわらず,長泥地区が帰還困難区域にあたり,蕨平・比曽地区が居住制限区域にあたるという形式的な理由だけで,両地区住民の申立てによる和解案を拒絶したものです。

 

東京電力は,政府に提出した累次の総合特別事業計画において,《原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を尊重する》旨を繰り返し誓約していながら,実際には,センターの度重なる説得にも応じず,自らの見解に固執して,センターの和解案に対する拒否回答を繰り返したものです(蕨平集団申立てにおいては5度の拒否回答,比曽集団申立てにおいては3度の拒否回答)。

 

原子力損害賠償紛争解決センターは,東京電力の最終回答が拒否回答だった場合には,和解仲介手続を打ち切る予定であることを既に通知しており,残念ながら,近く和解仲介手続が打ち切られる見込みです。

 

我が国史上類例をみない,最大希望の環境汚染を引き起こした加害者であることを忘れ,センターからの理を尽くした説得にも応じようとしない,東京電力のこのような傲岸不遜で不誠実な態度,政府には和解案を尊重していると言っておきながら,被害者に対しては和解案を拒絶する二枚舌は,社会的に厳しく非難されるべきです。

 

本件についての問い合せ先:

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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