【報告】南相馬集団申立ての進行協議に関するご報告

南相馬集団申立ての進行協議に関するご報告

2012年2月5日

原発被災者弁護団

原発被災者弁護団は,平成23年12月28日,南相馬市(旧緊急時避難準備区域内)の住民34世帯130人を代理して,避難費用,一時立入費用,減収損害,不動産損害及び慰謝料等の賠償を求め,原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申立てを行いました。
原子力損害賠償紛争解決センターでは,少人数の申立て事件でも手続きの進行が遅延している例が多いという現状があります。弁護団としては,本件も同様の方法で審理したのでは手続きが長期化し,和解仲介申立制度の趣旨に反することになるので,できるだけ早期に進行するよう申し入れました。
これに対し,原子力損害賠償紛争解決センターも,本件を集団申立て事件のモデルケースとして迅速に審理する意向を示し,平成24年1月5日に申立代理人と原子力損害紛争解決センターとの間で進行協議を行い,同年1月30日,更に被申立人も加えた三者での第1回口頭審理期日を行い,進行や審理の方法について協議しました。
その結果,合意に達したのは次の4点です。

 

 

1 チャンピオン方式の採用
34世帯130人の損害の全てについて,被申立人に詳細な認否を求めると,不必要に時間を要してしまいます。そこで,当面集中的に審理の対象とする6世帯を選択し,その6世帯に限った審理を行った上で仲介委員が基本和解案を提示し,当事者双方がその内容で合意ができれば,その余の28世帯分についても,合意した基本和解案に従い和解を行う,という方法で審理を進めることになりました(原子力損害紛争解決センターでは,これを「チャンピオン方式」と呼んでいます。)。

 

2 不動産損害以外の損害に係る和解案の提示の先行
不動産損害については,被申立人の側で賠償についての態度を明らかにしないことが予想され,その他の損害での和解まで遅延する可能性があることから,ひとまず,全損害について審理を行うものの,不動産損害以外の損害についての和解案の提示を先行させることになりました。
原発被災者弁護団としては,被申立人の対応にこそ問題があると考えますが,審理が長期化し,その間,被災者が一切の賠償を受けられないという事態を避けるため,不動産損害以外の損害について和解案の提示を先行させることを受け入れました。

 

3 計画的な審理計画
和解仲介手続きが長期化している要因の一つに,仲介委員及び当事者双方の日程調整が容易でなく,口頭審理期日がなかなか入らないという事情があります。
本件では,第1回口頭審理期日において,原子力損害賠償紛争解決センター東京事務所で平成24年2月27日,3月15日及び3月28日に口頭審理期日を開催し,3月28日に仲介委員が基本和解案を提示するという審理計画を合意しました。

 

4 南相馬市内での口頭審理期日の開催
平成24年3月初旬ころに南相馬市内に仲介委員らが赴き,南相馬市で口頭審理期日を開催することになりました。
申立人の皆さんが,仲介委員らに対し,この1年間,いかに不安な思いをされ,ご苦労されているかを,直接お話しいただく機会となります。

 

 

原発被災者弁護団としては,本件手続きを通じ,被災者の実態・請求内容に即した「迅速な」救済を実現できる方法を検討していきます。また,被申立人及び原子力損害紛争解決センターに対し,被災者の視点にたった手続きのあり方を求めていきます。

 

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