【報告】都路町訴訟第9回口頭弁論期日について

【報告】都路町訴訟第9回口頭弁論期日について

平成29年9月28日
原発被災者弁護団

 

1 第9回口頭弁論期日について
平成29年9月1日(金)午後2時,福島地方裁判所郡山支部303号法廷において,第9回都路町訴訟口頭弁論期日が開かれました。

 

2 提出書面の概要について
【原告提出書面の概要】
(文書送付嘱託申立書)東京電力の役員に対する刑事責任を追求する訴訟が,東京地方裁判所に係属しており,平成29年6月30日に第1回期日が開かれた。そこでは,国が捜査権限を使って集めたものを検察官役弁護士が検討して,刑事事件の法廷に証拠として出している。そこで,それらの刑事事件の証拠を当裁判で使う前提として,検察官役弁護士が作成した刑事事件の証拠リストなどの書面を当法廷に送付してもらい,当裁判を充実した審理にするよう求めた。
(原告第20準備書面)原賠法3条に基づく責任は,民法上の不法行為責任を排除するものではなく,また,原賠法3条に基づく慰謝料請求においても,被告らの非難性が慰謝料額の算定に影響することから,被告東電の過失を審理する必要があると主張した。
(原告第21準備書面)津波対策における予見の対象について,どのように考えるべきかということを法律論や本件における原発事故発生の経過を踏まえて,福島第一原発の敷地高さを超える津波が予見できれば十分であることを論じた上で,その根拠となる知見は,最新の科学知見,かつ,専門家の見解に相応の科学的信頼性,妥当性が認められれば十分であることを論じた。
(原告第22準備書面)津波対策における予見の対象は,福島第一原発の敷地高さを超える津波であり,津波による浸水により重要機器の被水が発生し,浸水・被水により重要機器が機能喪失して全交流電源喪失に至ることであること,被告らはこれらを予見できたことを論じた。
(原告第23準備書面)津波の高さに関する被告東電のシミュレーションは信用できないことを述べるとともに,被告東電に対し,シミュレーション結果の詳細と津波の痕跡にかかる証拠の開示を求めた。
(原告第24準備書面)原告らは,原告第6準備書面において,本件事故の結果回避措置の具体的内容について主張を行ったが,これに追加して,①格納容器内のIC弁の手動開操作のためのハンドルの設置すること,②代替注水ラインを確保した上で,SR弁の遠隔手動開操作を行い,格納容器をベントすることでも,結果回避が可能であったと主張した。
(原告第25準備書面)外国籍の原告についての国家賠償法上のルール(相互保証問題)についての書面。
(原告第26準備書面)原告らが請求する慰謝料とは,本件原発事故に伴い発生した非財産的損害であり,この非財産的損害とは,自然豊かなコミュニティ等の喪失であると主張し,その具体的な内容を述べた。原告らの請求金額は,交通事故における死亡慰謝料の算定基準や公害訴訟,薬害訴訟における慰謝料額と比較しても妥当であるし,本件では,加害者,被害者,双方の事情から,慰謝料増額事由が存在することを主張した。また,原子力損害賠償紛争審査会が策定した中間指針等は,自主的解決の場面で,典型的な損害項目を迅速に決定することを趣旨とするもので,裁判規範としては,妥当しないことを論じた。
(原告第27準備書面)年間積算線量20mSvまでは許容しうると考える低線量WG報告書やICRPは,低線量被ばくに関する多くの科学的知見に反し,誤りであると主張した。
(原告第28準備書面)津田敏秀氏らの研究や宗川吉汪氏らの研究により,福島県において既に事故当時18歳以下の年齢層における甲状腺ガンの多発が検出されていること,これは,原発事故による放射線被ばくによる影響であり,かかる結果に照らせば,初期被ばくをした者が追加被ばくの影響を少しでも低減させる手段の一つとして被ばくの少ない場所に住み,内部被ばく及び外部被ばくを避けることは,十分な合理性があり,避難を継続したいが,諸事情からやむを得ず都路に戻った者が,いつガンを発症するかという不安を持つことは,抽象的な不安とはいえないと主張した。
(原告第29準備書面)細胞がガン化するメカニズムの側面から,細胞に対する放射線の影響は,高線量の場合も低線量の場合も,放射線1単位当たりで見た時には原則として同じであり,線量の増加は,原則として,それに正比例して放射線起因の発ガンの確率の増加を生じると考えられることを論じた。さらに,放射線照射を長時間続けると,瞬間的な短時間照射の時よりもはるかに低い放射線量の吸収で,細胞膜が破れるという“ペトカウ効果”から,低線量においては,細胞に対する放射線の効率が高く,発ガンの確率の増加が多い可能性もあると論じた。

 

【被告東電提出書面の概要】
(被告東電・準備書面(10))津波は予見可能であったとの原告の主張に対して,そうではないと主張している。
(被告東電・準備書面(11))1号機が地震で壊れたという原告の主張に対して,津波が来るまでは,持ちこたえていたと主張している。

 

3 意見陳述等について
原告1名による意見陳述と原告代理人(文書送付嘱託申立書:吉野高弁護士,原告第20準備書面:森将弁護士,原告第21準備書面:林浩靖弁護士,原告第22準備書面:殷勇基弁護士,原告第23準備書面:小口幸人弁護士,原告第24準備書面:飯島康夫弁護士,原告第26準備書面:小海範亮弁護士,原告第27準備書面:星野大樹弁護士,原告第28準備書面:土屋義隆弁護士,原告第29準備書面:亀井真紀弁護士)による準備書面要旨の陳述が行われました。

 

4 進行について
現在,原告と被告らの双方により,責任論に関する主張・反論が行われています。今後も,しばらく,責任論に関する主張立証が続く予定ですが,損害論に関する主張も開始されました。

 

5 今後の日程について
平成29年11月24日(金)14時~ 福島地方裁判所郡山支部303号法廷
平成30年2月9日(金)同上

 

【本件についての問合せ先】
原発被災者弁護団都路町担当 弁護士 林 浩靖(03-6912-9271)