【報告】鹿島区訴訟第8回口頭弁論期日について
平成29年6月28日
原発被災者弁護団
1 第8回口頭弁論期日について
平成29年5月15日(月)午後2時,福島地方裁判所203号法廷において,第8回鹿島区訴訟口頭弁論期日が開かれました。
2 出席者について
裁判官3名,原告代理人15名,被告国代理人8名,被告東京電力3名
3 提出書面の概要について
【原告提出書面の概要】
第10準備書面(被告国の規制権限不行使の判断枠組みに関する主張,及び,被告国第2準備書面に対する反論)
国は,東電に対し,規制権限を行使して,地震・津波によっても事故を起こさないような備えをさせるべきであったにもかかわらず,それをしなかったことによって原発事故が発生した。このような国による「規制権限不行使」の問題について,国は,権限を行使するかどうかは国の広い裁量に委ねられており,本件について賠償責任を負わないと主張しているが,過去に国の規制権限不行使による損害が問題となった最高裁判例を整理・分析した上で,本件の特殊性(被害が甚大で回復できないこと)等を踏まえて判断すれば,規制権限を行使しなかったことは,著しく合理性を欠いており違法である。
第11準備書面(3名の専門家の証言により長期評価の信頼性が確認されたこと,及び,2002年時点で福島第一原発が津波襲来時に被水することを予見できたこと)
福島第一原発に本件の津波が到来することが予見できたことの根拠の一つである「長期評価」について,被告らは信頼性がないと述べるが,専門家の証言によって,同評価が信用できること,さらに津波到来が予見可能であったことが確認された。
第12準備書面(被告らの津波に関する知見並びに被害発生の予見可能性に関する補充主張,及び,かかる点に関する被告らの主張に対する反論)
被告らが津波に関して知見を有しており,本件の津波発生を予見できたことは既に詳細に述べているが,これに対し,被告らから反論があった点について,再反論と補充の主張を行う。
第13準備書面(被告らは不十分な「津波評価技術」にさえ従っていなかったこと)
被告らが津波を予見できなかった根拠として挙げる「津波評価技術」は,それ自体不十分であるが,被告らは,そのような不十分な指標すら遵守していない。
第14準備書面(被告らの地震に関する過失に関する主張についての反論)
被告らは,1号機の原発事故が地震によって発生したとの原告の主張に対し,いくつかの根拠を示して反論するが,被告らの反論は,客観的なデータ等に整合していない。客観的データその他の証拠は,原告の主張に整合しており,1号機が地震によって大きな損傷を受けたことは明らかである。
第15準備書面(SAに関する被告らの主張に対する反論及び補充主張)
シビアアクシデント(SA)対策違反により被告らが責任を負うべきことについて,被告らは,SA対策違反によって責任を負わされることは,本件の津波や地震といった具体的事象の予見可能性がなくとも賠償責任を問われるもので不当と主張するが,SA対策は,具体的事象とは別個の責任原因であり,被告らの反論は当たらない。
第16準備書面(平成28年(ワ)第266号事件の原告番号及び本件事故時の住所について)
原告らの住所に関する補充。
【被告東京電力提出書面の概要】
準備書面(5)(原告第9準備書面に対する反論)
津波の高さに関する反論。
準備書面(6)(原告第7準備書面に対する反論)
2008年試算に関する反論。
準備書面(7)(過失の審理の必要性について)
被告東電の過失審理が不要であることの主張。
準備書面(8)(原告第6準備書面に対する反論及び結果回避義務についての主張)
津波の予見可能性及び結果回避義務についての反論。
4 意見陳述等について
原告代表者1名による意見陳述と原告代理人(樋口弁護士)による第14準備書面(地震)の要旨陳述が行われました。
5 進行について
現在,原告と被告の双方より,責任論に関する主張・反論が行われています。今回の提出書面においては,責任論に関する争点のうち,津波の予見可能性,長期評価の信頼性,1号機の事故原因が地震であること,シビアアクシデント対策の懈怠,規制権限不行使の違法性の判断枠組みなどに関する書面が提出されています。今後も,しばらく,責任論に関する主張立証が続きます。
6 今後の日程について
7月18日(火)14時 鹿島区訴訟第9回口頭弁論期日(203号法廷)
9月26日(火)14時 鹿島区訴訟第10回口頭弁論期日(場所未定)
12月4日(月)14時 鹿島区訴訟第11回口頭弁論期日(場所未定)
【本件についての問合せ先】
原発被災者弁護団鹿島区担当 弁護士 内田 明
(マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142)