【報告】飯舘村長泥・蕨平田畑集団申立てで東京電力がセンターの和解案を拒否

2017.6.28

 

2017.6.9付けニュースでお伝えしましたように,飯舘村長泥・蕨平の住民72世帯77名が申し立てた,田畑の財物損害の東京電力基準以上の賠償を求める集団申立てで,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」)は,平成29年2月14日に提示した,東電基準を上回る和解案(和解金額は,提示後一部修正があり,和解案が提示された71世帯76名合計で約1億7080万円,以下「本和解案」)について,平成29年6月9日付け「連絡書」によって,東京電力に和解案の受諾を勧告し,3回目の回答期限を同年6月23日と指定していました。

 

ところが,東京電力は,平成29年6月23日付けで「回答書」を提出し,東京電力基準によって計算して未払い(12/72の追加払い)の金額がある申立人については当該未払金を支払うが,それ以上は一切支払わないという,センターの和解案を拒否する内容の回答を行いました。

 

東京電力は,和解案を拒否する理由として,福島県不動産鑑定士協会所属の匿名の鑑定士に口頭で意見を聞いたなどとして,センターの和解案には合理性がないと主張しています。また,東京電力は,多額の報酬を福島県不動産鑑定士協会に支払って,基準地の不動産価格調査書の作成を依頼し,それを元に田畑の賠償に関する東京電力基準を策定していると見られますが,《第三者機関であり被申立人と何らの利害関係のない福島県不動産鑑定士協会作成の不動産価格調査書は合理的であり,センターの和解案は合理的でない》などと独善的な主張を行っています。

 

本件は,田畑の財物賠償額の問題ですから,唯一絶対の正解があるわけではなく,本質的に評価の問題です。

東京電力は,国から資金交付を受けるにあたって政府に提出した新・総合特別事業計画において,《センターから提示された和解案を尊重する》と誓約している以上,センターの仲介委員が,東京電力の不動産価格調査書の不合理な点を指摘しつつ,申立人らが長年かけて田畑に注いできた労力など,本件和解仲介手続にあらわれた一切の事情を考慮して,合理的裁量に基づき行った損害の評価を尊重し,和解案を受諾すべきものです。

 

にもかかわらず,東京電力は,センターが飯舘村長泥地区,蕨平地区の被害実態を踏まえ,合理的裁量に基づいて提示した和解案を尊重せず,自社の賠償基準に拘泥し,センターの和解案を拒否しました。

 

このような東京電力による独善的な和解案拒否を許したのでは,センターによる和解仲介手続の紛争解決機能は失われ,センターの存在意義が没却されます。

 

当弁護団は,東京電力に対し,センターの和解案を拒否したことを強く抗議するとともに,センターの和解案を受諾するよう,改めて要求します。

 

本件についての問い合せ先:

原発被災者弁護団 事務局次長 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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