【報告】「ふるさとを取り戻せ!」小高区民の集団提訴について

「ふるさとを取り戻せ!」小高区民の集団提訴について

 

  当弁護団は、平成27年10月8日、南相馬市小高区住民の方々を原告として、東京電力株式会社と国を被告とする損害賠償請求訴訟を福島地方裁判所相馬支部に提起しました。

 

  この訴訟は、小高に住み、小高で暮らしてきた住民が原発事故をきっかけに失うこととなってしまったふるさと、地域コミュニティの喪失についての慰謝料と弁護士費用を請求しています。原告は、126世帯398名の南相馬市小高区住民のみなさん、被告は、東京電力株式会社と国です。 訴訟では、原告一人当たり2000万円の地域コミュニティ(ふるさと)喪失慰謝料と弁護士費用200万円を請求しており、請求総額は87億5600万円です。

 

   これまでに小高区の住民は、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)において、原発事故により地域コミュニティ(ふるさと)を奪われた精神的損害の賠償を訴えてきました。しかし、ADRでは、一部について和解は成立したものの、地域コミュニティ(ふるさと)喪失慰謝料について、判断がなされませんでした。そこで、小高区の住民の方々は、いま失われてしまった、かつての、人の交流や自然の豊かなふるさとを取り戻すため、裁判において自らの損害の回復を訴えようと、提訴に踏み切ったものです。 訴状では、国や東京電力の責任を述べるほか、小高区がどのような歴史・文化を持つ地域であるか、住民による地域コミュニティがどのように活動してきたのか、事故前の「おだかe-まちタクシー」や「小収店」事業などの先進的な活動等を紹介しています。 そして、事故後、小高区の地域コミュニティ(ふるさと)が崩壊してしまったこと、その再生が放射能汚染等により困難である現状等を指摘し、原発事故によって住民の人格発達権(自己の選択に従って交流し発展する権利、居住・移転の自由など),平穏生活権,環境権(良好な自然環境を享受しうる権利)などの憲法上の重大な権利が侵害されていること、それによって住民に多大な精神的損害が生じていることを主張して、賠償を求めています。

 

  当弁護団は、本件を、住民に最も身近な福島地方裁判所相馬支部に審理してもらいたいとの意見を、同裁判所に対して上申しました。 しかし、裁判所は、本件を福島市にある福島地方裁判所本庁で審理することに決定しました(回付)。そこで、当弁護団は、上級の仙台高等裁判所に対し、本件訴訟はふるさとの喪失についての損害賠償請求事件であるから、相馬支部で訴訟を審理するべきと主張して、回付の取消しや再回付を求めました。残念ながら、裁判所は回付の取消しや再回付の措置はとっていません。 今までに、多数の訴訟で、地元の裁判所(支部)で審理してほしいとの意見を述べていますが、依然、相馬支部に裁判官が1人しか配されず、合議体(裁判官3人体制の審理方式)が構成できない状況が続いていることから、なかなか実現が難しい課題となっています。   本件訴訟の進行については、まず訴訟費用の猶予に関する審理を行うことになっており、まだ、その後に行われる本体の損害賠償請求訴訟について、第1回口頭弁論期日は決まっておりません。

 

  当弁護団は、今後、今回の提訴には間に合わなかったけれども原告として参加したいという小高の住民の方々を募り、ますます多くの声を束ねて力を合わせて、裁判所に小高区住民の思いを届けるべく、尽力してまいります。 引き続きよろしくお願いいたします。