【報告】「センター限り」提出問題での仲介委員忌避申立てについてセンターが決定

【報告】「センター限り」提出問題での仲介委員忌避申立てについてセンターが決定   2015.4.30

   2015年4月10日付けニュースでお知らせしていましたように,飯舘村長泥・蕨平田畑集団ADR申立てにおいて,東京電力代理人が,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」)に対し,東京電力基準の根拠となった不動産鑑定書を「センター限り」として提出し,センターも,申立人側には一切伏せてこれを検討していたことについて,申立人側は,4月9日付けで,センター総括委員会に,担当の仲介委員の忌避(手続の不公正を理由に仲介委員を変更すること)を申し立てていました。

   これに対し,センター総括委員会は,4月20日付決定により,申立てを却下しました。

   決定は,福島県不動産鑑定士協会が基準地の地価を調査した結果である,不動産価格調査書(以下「本件調査書」)を東京電力代理人が「センター限り」の資料として提出したこと,仲介委員から東京電力代理人に対して,本件調査書を,申立人らにも副本を交付することを前提とする正式な証拠として提出するよう求めたこと,東京電力代理人は,①福島県不動産鑑定士協会との間で一般には公開しないものとすることが了解されているとの点,②基準地の所有者の承諾が必要であるとの点の2点を理由にこれに応じなかったこと等の事実関係を確認しました。 その上で,決定は,和解仲介手続をどのように進めるかは,手続を実施する仲介委員の裁量的判断に委ねられているとし,本件においては,仲介委員らが,「センター限り」として提出された資料は証拠として採用できないとの認識に基づいて,本件調査書を証拠として提出するよう東京電力代理人に再三求めたことから,仲介委員の対応は,その裁量権を逸脱・濫用するものではなく,「和解仲介手続の公正を妨げるべき事情」に該当するとはいえない,と判断しました。

   しかし,東京電力代理人から「センター限り」の資料として提出された時点で,証拠として採用できないものであることは明らかなのですから,担当の仲介委員・調査官は,本件調査書を東京電力代理人に突き返すべきでした。仲介委員らから正式な証拠として提出するよう東京電力代理人に再三求めたと言いますが,結局,東京電力代理人は応じていないわけで,仲介委員・調査官が,申立人側には一切開示されていない本件調査書を検討してしまった,という不公正な事実が残ります。

 申立人側は,仲介委員・調査官が,申立人側に黙って本件調査書を検討したことを問題にしているにもかかわらず,決定はこの点について答えていません。

   仲介委員・調査官は,本件調査書を「証拠とはしない」「審理の進行を検討するために参考にしたにとどまる」と言っていますが,仲介委員や調査官の頭の中で,「審理の進行」の検討と,「審理の内容」の検討とを明確に区分できるはずがありませんし,「審理の進行」がどのようになされるかが,「審理の内容」に影響することも明らかです。

 申立人の側からすれば,仲介委員・調査官が本件調査書を検討したことが,和解案に影響するのではないかと危惧し,手続が不公正であると感じることは当然です。

   センター総括委員会が,このような,申立人らが当然抱く危惧や不公正感を無視し,仲介委員の裁量を強調して,忌避申立てを却下したことは,センターが,被害者に対する信頼を自ら失わしめる行為といえます。

 このようなことでは,本件原発事故の被害者は,センターを,公正な手続が行われる機関として信頼することはできません。

   センター総括委員会の今回の決定には,被害者に信頼されるセンターであるために何が重要かという観点が抜け落ちており,容認することはできません。当弁護団は,センター総括委員会の不当な決定に対して抗議します。

   また,今回,センター総括委員会がこのような決定をしたことから,本件に限らず,他にも同様に東京電力が「センター限り」として実質的な証拠資料を提供しており,仲介委員・調査官がそれを検討しているのではないかという疑いがぬぐいきれません。

 センター総括委員会及びセンター和解仲介室は,当弁護団からの,同様の事例について調査の上で公表されたいとの4月9日付けの申し入れに対し,何ら回答していません。

 当弁護団は,センターに対し,上記の調査申し入れに対して速やかにかつ誠実に回答することを求めます。

   本件についての問い合せ先: 原発被災者弁護団 事務局次長 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

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