【報告】南相馬市鹿島区の方を対象とした集団訴訟(鹿島区訴訟)を提起しました

当弁護団は、福島県南相馬市鹿島区(ただし、鹿島区のうち30㎞圏外であって、特定避難勧奨地点にも指定されていない方が対象です。)の住民の方を原告として、国と東京電力株式会社を被告とする、損害賠償請求訴訟を提起いたしました。

 

〈申立人数・世帯〉

第1陣:平成26年10月29日提訴     11世帯23名

第2陣:平成27年3月27日提訴      97世帯249名

〈提訴裁判所〉 福島地方裁判所相馬支部(ただし、第1陣は福島地方裁判所本庁に回付)

〈請求の趣旨〉 1人あたり慰謝料600万円+弁護士費用60万円

 

〈申立のポイント〉 福島県南相馬市鹿島区(ただし、鹿島区のうち30㎞圏外であり、特定避難勧奨地点に指定されていない方に限ります。)は、福島第一原子力発電所から30㎞圏内の地域と同様に、行政の指示により避難を強制された地域であるにもかかわらず、原子力損害賠償紛争審査会の作成した中間指針において、避難地域としては最も早い時期(平成23年7月)に賠償が打ち切られました。しかし、放射能に対する恐怖や生活の混乱などの被害は30㎞圏内の地域と変わらないものであり、賠償終期について大きく異なる取扱いがなされたことに対する鹿島区住民の不満は大きく、これを「線引きによる差別問題」と呼び、その改善を求め、請願等を行ってきました。 平成24年以降、原告らの一部は、数次にわたり、原子力損害賠償紛争解決センターに対し、東京電力株式会社を相手方として、集団で和解仲介手続申立を行い、東京電力が設定した平成23年9月の賠償終期の延長を求めてきました。しかし、同センターは、賠償終期に関する判断を回避したため、紛争は解決されませんでした。そこで、この度、多くの鹿島区住民の方が、前述の線引きによる差別の解消を求め、提訴するにいたりました。

 

〈回付の問題〉 原子力損害賠償紛争解決センターは、被害の実情を現地で確認せず、何ら理由を示すことなく、賠償終期に関する判断を回避しました。原告らは、この集団ADR申立を通じ、東京という被害地域から離れた場所にいる仲介委員に被害の実情を伝えることの難しさを痛感しました。 そこで、原告らは、自分たちにとって身近な「地元の裁判所」の判断を求め、被害の実態を正しく伝えるためには「自分たちの裁判」として積極的に審理に参加すべきであるが、「地元の裁判所」でなければそれはかなわないと考え、本件訴訟の提起をあえて相馬支部に行いました。 しかし、平成26年11月11日、協議の申し入れも受け入れることなく、相馬支部に裁判官が1人しかおらず合議体(裁判官3人体制の審理方式)が構成できないという理由により福島地方裁判所本庁に事件を移動(回付)させる旨を告げられました。これを受けて、同年12月2日、仙台高等裁判所に福島地裁本庁から相馬支部への再回付及び相馬支部における回付の取消しを指導するよう上申書を提出しましたが、現在まで何の措置も取られていません。そこで、平成27年3月27日、最高裁判所に福島地裁本庁から相馬支部への再回付及び相馬支部における回付の取り消しを指導するよう上申書(PDFファイル199KB)を提出しました。

  【回付とは】  回付とは、同一の裁判所内における事務分配としての事件の移動をいいます。具体的には、同一の地方裁判所の本庁と支部との間、または支部相互間で事件を移動させることです。裁判所の見解は、司法行政上の措置であって、訴訟法上の手続ではないことから、訴訟法上の異議申立の対象にはならないとされています。