【公開質問状】原子力損害紛争審査会への公開質問状を提出しました。

当弁護団では,本日原子力損害紛争審査会に下記のとおり公開質問状を提出いたしました。

公開質問状

平成23年12月12日

原子力損害賠償紛争審査会

委員長 能見 善久 殿 

 

(連絡先)〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目8番16号第2升本ビル5階                

東日本大震災による原発事故被災者支援弁護団

                      弁護団長 丸山 輝久

                       副団長 前川  渡

                       副団長 大森 秀昭

                      事務局長 下谷  收

 

当団は,福島第一原発事故(以下,「本件事故」という。)により被った損害が適正にかつ迅速に実施され,被害者が早期に再起・再建できる一助となるために活動する団体として,貴会に対し,下記のとおり質問します。当団は,12月12日時点で,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)に, 50件(申請人数84名)の申立を行い,今後も申立を加速していく方針です。しかし,当団がセンターに申し立てた案件の一部について和解案が12月下旬に出されることが予想されていますこととの関係上,12月20日までに,上記連絡先あてに文書にてご回答いただきたくお願いします。なお,本公開質問状およびその回答は,記者会見及び当団のホームページ等で公表させていただくことを申し添えます。

 

 貴会の作成した中間指針は,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)の和解仲介手続においてどのような効力を有するのでしょうか。

(質問の理由)

当団は,中間指針はあくまでも「当事者の自主的な解決」を図るための目安にすぎないのであって,センターでの和解仲介手続においても同様であると考えています。

このような目安が意味あるのは,同一種類の膨大な数の請求について,迅速に大量処理する場合であると思いますが,指針を過度に重要視すると個別事情が無視され,また,指針に記載のない損害は賠償対象外ということになり,被災者の賠償が不当に低額化,限定化されてしまう危険性があります。現に,東京電力は,中間指針のうち金額が明示されているものはそれが認められる最大金額であるとし,規定のない項目については今回の請求範囲から除外するという態度を貫いています。

また,現在進行しているセンターの和解仲介手続の実態は,細部にわたる主張立証を求めており,本来の趣旨であった迅速かつ簡易な解決とは懸け離れたものとなっているのではないかとの懸念があります。

したがって,中間指針は,センターでの和解手続において,賠償対象を限定し,かつ,その賠償額を理由なく低額に抑える役割を果たす結果になるものです。

そこで,貴会は,センターの和解手続において,中間指針がどのような役割を持つべきかについて考え方をお聞かせください。

 和解仲介手続きを通じて具体的に被害者の声を聞くことで被害の実態を把握し,センター自体が,中間指針に定められた項目について,中間指針の基準を上回る基準を一般的に打ち出すことはできないとの考え方なのでしょうか。

(質問の理由)

例えば避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害について,中間指針では第1期につき月額10万ないし12万円という目安を定めています。そして,「本件事故が収束せず被害の拡大が見られる状況下,賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示したものであるから,中間指針で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく,個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る」と定めています(第1・4)。

この目安とされている金額そのものの妥当性に疑問がありますが,和解仲介手続を申し立てた場合には,その金額が目安の金額が最高額であって,それ以上の金額はセンターの和解ではできないというのが東京電力の考え方です。また,当団がセンターに和解仲介を申立てた案件の中には,仲介委員から「貴会が最高裁判所で,中間指針が最高裁判所判決であり,センターはその判断に逆らうことはできない」旨断言された事実があります。

このような事実を前提にすると,被災者から見て,センターが適正かつ迅速な賠償決定機関の役割を果たすことはできなくなると思います。

和解仲介手続を通じて,センターが具体的に被害者の声を聞くことで,被害の実態を理解し,中間指針の金額に捉われずにセンターが和解案を提案することは許されないのでしょうか。この点について,貴会のお考えをお聞かせください。

3 中間指針は,貴会の平成12年3月9日付最終報告書(東海臨界事故)の「身体的障害を伴わない精神的苦痛に関しては」「特別の事情がない限り認められない」との考え方を踏襲しているものと思われます。しかし,東海臨界事故は,施設外への放射能汚染はなかったとされている事案であり,極めて広範囲にかつ深刻な量の放射能を飛散させた今回の事故についても同様の考え方をとる理由をご説明いただきたく存じます。

(質問の理由)

上記最終報告書では,認めない理由を「過大請求」を阻止するためであるとしていますが,今回の事故は,現に,放射能に汚染された土地・建物で,放射能に汚染された山野に囲まれて,際限のない期間生活することを強いられている国民を賠償対象から除外する理由をお聞かせいただきたく存じます。

 

以上

 

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