【報告】住居確保損害の合意書について東京電力から回答書

【報告】住居確保損害の合意書について東京電力から回答書

  2015.4.3

 

   2015年3月23日付けニュースでお知らせしていましたように,当弁護団は,同日付けで,東京電力に対し,住居確保損害の合意書について申入書を提出していました。

   要約すると,住居確保損害の合意書中の次の条項(本件条項)について,清算条項の一種と解され,被害者の利益を損なうので削除することを求めたものです。

  〔本件条項〕

「・・・別紙『算定額の内訳』に記載の『賠償金額(累計)』が『賠償上限金額』に達した以降は,増減税や著しい地価の変動その他の事由により賠償上限金額の取扱いに変更があった場合であっても,東京電力に対して,追加の賠償の請求をすることはできないことについて合意します。」

 

    これに対し,東京電力から,平成27年4月2日付けで,回答書が送付されました。

    東京電力は,回答書で, 「 弊社としましては,中間指針第四次追補の考え方を踏まえ,賠償上限金額の算定にあたっては,ご請求者さまが実際に費用を負担された時点の状況を踏まえた消費税等の税率や宅地単価等を用いて算定することとしており,予め合意書や請求書類の解説においてご案内をさせていただいているところです。」 としています。

  しかし,他の損害項目では,批判を受けて清算条項を合意書に入れていないのに,なぜ住居確保損害についてのみ清算条項と解される本件条項を入れているのか,東京電力の上記回答では明らかでありません。 東京電力は,中間指針第四次追補の記載に言及していますが,慰謝料等の他の損害項目では中間指針の記載を理由に清算条項を付けていないのですから,やはり,取扱いを異にする理由は不明です。 しかも,中間指針第四次追補では,実際の費用支出前に見積書等を元に概算で請求することを認めているのですから,東京電力の中間指針第四次追補の記載への言及も,清算条項を付ける理由として不十分です。

  中間指針第四次追補自体が,「本指針で示す損害額の算定方法が,他の合理的な算定方法の採用を排除するものではない。」としており,ADRや訴訟では,東京電力の賠償上限金額を上回る賠償が認められる可能性があります。にもかかわらず,本件条項があることで,東京電力が一方的に定めた賠償上限金額を超える賠償が認められなくなる可能性が生じることは,被害者に不当に不利益を及ぼすものです。

  当弁護団は,改めて東京電力に対して,本件条項を合意書に入れていることについて抗議するとともに,削除を求めます。

  なお,東京電力の回答と本件条項の文言からすれば,既に本件条項を含んだ合意書を締結している被害者についても,受領した賠償金額が賠償上限金額に達していない間は,増税や地価上昇により,賠償上限金額が増額変更された場合には,増額変更後の賠償上限金額の適用を受けられるものと考えられます。

 

   本件についての問い合せ先: 原発被災者弁護団 事務局次長 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

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