【記者会見資料】南相馬市特定避難勧奨地点財物賠償の和解仲介申立て(集団)
平成26年12月26日
原発被災者弁護団
1 請求の概要
平成26年7月4日付「【報告】南相馬市特定避難勧奨地点財物賠償等の和解仲介申立て(集団)について」)を参照。
2 和解案の概要
(1)申立人らの概要
福島県南相馬市原町区馬場地区及び大原地区の特定避難勧奨地点10世帯52名及び同地点に隣接する特定避難勧奨地点の指定を受けていない1世帯9名
(2)和解案で認められた賠償金額
ア 総額 約4億3280万円
イ 主な損害項目(内訳)
・財物賠償(土地) 約3783万円
・財物賠償(建物,構築物,庭木) 約2億1790万円
建物 約1億8745万円
構築物,庭木 約3045万
・財物賠償(家財) 5862万5000円
・精神的損害 約1億0089万円 ※東京電力からの既払分を除く
3 各損害項目の概要
(1)不動産
ア 財物賠償に関する考え方(総論)
・居住制限区域,避難指示解除準備区域の財物賠償の基準を準用し,価値減少率を認める。
・南相馬市の特定避難勧奨地点の指定は現在も解除されていないことを踏まえ,全損の6割から5割の価値減少率を認めた。
※価値減少率の算式 n(賠償対象期間)/72(事故後6年×12ヶ月)
最大値は,46ヶ月/72ヶ月
・管理不能であった期間を価値減少率の基準としており,事故後約15ヶ月後に自宅に戻った世帯については価値減少率を20%としている。
・特定避難勧奨地点の隣地についても賠償も認める
イ 土地 平成22年固定資産税評価額×1.43×価値減少率
ウ 建物
・住居確保損害の認定はなく,従前の財物価値の賠償です。
※ 特定避難勧奨地点の指定の解除はなされておらず,まだ賠償額は確定していない
・居宅については48年経過後の残存価値を4割として算定。
・それ以外の建物については,残存価値2割として算定。
エ 構築物,庭木
・東電基準×価値減少率
(2)家財
・居住制限区域,避難指示解除準備区域における東電基準を準用
※資料2(家財の賠償基準)を参照 世帯基礎額 + 構成員加算額 355万円 + 大人1名あたり45万円 子ども1名あたり30万円
(3)慰謝料
ア 非指定世帯(特定避難勧奨地点の隣地) 原子力損害賠償紛争解決センターのこれまでの和解事例を踏まえ,原発事故時から和解案提示月まで(平成23年3月から平成26年12月まで),月額10万円の慰謝料の支払いを認める。
※ただし,特定避難勧奨地点の指定の解除はなされておらず,まだ賠償終期ではない → 追加賠償の可能性あり
イ 特定避難勧奨地点の世帯構成員を実質的に認定し,慰謝料を肯定 特定避難勧奨地点に指定された世帯の構成員の認定は住民票基準でなされているところ,同地点指定時に住民票が他所にあった構成員につき,居住実態を踏まえて実質的に当該世帯構成員であることを認定し,住民票のある構成員と同様の慰謝料を認めた。
ウ 慰謝料の増額
・妊婦,乳幼児,病気,障害等の事情がある場合,月額慰謝料の増額を認める。
・世帯分離の慰謝料増額を認める。 構成員が2つに分離 分離期間中,世帯で月6万円増額 構成員が3つに分離 分離期間中,世帯で月8万円増額 構成員が4つ以上に分離 分離期間中,世帯で月10万円増額
エ これらとは別に,ペット喪失慰謝料1世帯10万円,葬儀が出来なかった慰謝料15万円を認定。
4 本和解案の意義
(1)原子力損害賠償紛争審査会の賠償指針が特定避難勧奨地点の住民に対する財物賠償につき定めておらず,東京電力も賠償基準を設けていない状況下,居住制限区域,避難指示解除準備区域の賠償基準を準用し,土地,建物のみならず,家財についても一定の賠償を認めた。
(2)未だ特定避難勧奨地点の指定が解除されていない南相馬市内の同地点 の不動産等の財物賠償に関する初めての和解案である(平成26年12月26日現在)。
(3)国の指針が全ての被害を網羅できているわけではなく,被害実態を踏まえた賠償の重要性を改めて確認させられる和解案である。
5 和解案回答期限 平成27年1月9日(金)
6 今後の検討点・課題
・ 国の指針に定めのない地域の財物賠償の動向 財物賠償が認められるのは本当に避難指示区域のみなのか?
・区域の指定と賠償基準・内容の相対化 避難指示区域内でも,避難指示解除準備区域・居住制限区域の財物賠償において,帰還困難区域と同等の賠償(全損)を認め,住居確保損害を認める原子力損害賠償紛争解決センターの和解事例が存在する。
→区域の指定が賠償の分かれ目となるような被害実態にそぐわない画一的処理ではなく,被害実態を踏まえた賠償こそが重要である。
・財物賠償の判断基準である管理不能要件の柔軟な認定が必要である 避難の遅れ,一時帰宅などの事情をもって,管理可能であったと安易に認定することは被災者救済に逆行するものであり,原子力損害賠償紛争解決センターには,管理不能要件の柔軟な認定が求められる。
以上
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