【報告】飯舘村蕨平集団申立てで東電が3度目の和解案拒否

2014.12.26

   12月11日付けニュースでご報告しましたように,飯舘村蕨平集団申立て(33世帯111名)で,原子力損害賠償紛争解決センターの担当仲介委員は,平成26年12月10日付け「和解案提示理由補充書」を示し,東京電力に対し,和解案を受諾するよう強く求めていました。

   しかしながら,東京電力は,12月25日,「回答書」をセンターに提出し,改めて,①慰謝料一括払いの1年延長,②被ばく不安による慰謝料の増額の2点について,センターの和解案を拒否しました。

   東京電力は,和解案を拒否する理由について,従前と同様に,①については,蕨平地区において,原発事故から6年後の平成29年3月までに住民が帰還して元の生活に戻ることが困難だと現時点で断定できない,②については,低線量被ばくに関する科学的知見やデータに照らせば,損害賠償を基礎付けるだけの具体的な権利侵害があったとはいえない,と主張しています。

   センターは,和解案提示理由補充書で,①について,そもそも森林について一部の除染の予定しかないことや,飯舘村の村長も復興大臣に対する要望書で「帰村時期が具体的に示せない」と認めていること,申立人らが農業や畜産業を再開することが相当長期間困難であることなどを具体的に指摘し,少なくとも原発事故から6年間は住民が帰還して元の生活に戻ることは困難だとの判断を示していました。

   また,②についても,申立人らの陳述書から申立人らの声を具体的に引用して,旧警戒区域・帰還困難区域に比肩する高線量の地点が生活圏全般にわたって多数存在した蕨平に留まり続けた申立人らが,放射線被ばくへの現在及び将来にわたる恐怖や不安を感じているのは無理からぬことであって,これは具体的な権利侵害である,と指摘していました。

   今回,こうしたセンターの判断・指摘は,東京電力に無視された形となりました。

   東京電力のこのような対応は,自ら誓約している,センターの「和解案の尊重」を放棄するに等しいものであり,センターの紛争解決機能や存在意義を失わせる危険を有するものです。

   当弁護団は,東京電力の拒否回答に対し強く抗議します。

   本件についての問い合せ先: 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

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