【ご注意下さい】山林・原野・立木等の合意書にご注意を

2014.12.24

   東京電力が平成26年9月から受付を開始した,山林・原野・準宅地・立木等の直接請求において,東京電力が被害者に提出を求める「合意書」に,極めて問題のある条項を挿入していたことが判明しました。その条項とは,次の内容です。

 

  「・・・各お支払い明細書記載の宅地・田畑以外の土地および立木にかかる賠償金については,今回の算定額で合意するため,今後当該資産については,再度ご請求できないこと賠償金額は変更できないこと,および本賠償以外ですでに請求中の場合にはこれを取り下げることについて合意します。」

 

   上記の条項は,いわゆる「清算条項」「取下げ合意条項」といって,上記合意書で合意した山林・原野,立木等の損害について,合意金額以上の金額を再度ADRや訴訟で請求できない効果や,既にADRや訴訟で山林・原野,立木等について請求していた場合には,当該ADRや訴訟での請求を取り下げる合意をした効果を生じる可能性があります。

   被害者の方で,山林・原野・立木等について,「とりあえず直接請求で支払われる部分は支払を受けて,後日,ADRや訴訟で正当な賠償額との差額を追加請求したい」と考えられている方は,上記合意書を提出してしまうと,追加請求が認められなくなってしまうリスクがあります。東京電力の直接請求の基準以上の賠償を求める可能性を残しておきたい方は,今回の合意書については,提出を保留にしておくことをお勧めいたします。

   東京電力は,平成23年9月の賠償開始当初,合意書見本に「なお,上記金額の受領以降は,結果通知書記載の各金額及び本合意書記載の各金額について,一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」との条項を入れて,各方面から強く批判され,当該条項を合意書から削除した経緯があります。

   以降,東京電力は,上記のようないわゆる清算条項を合意書に入れることはない旨を表明してきました。例えば,平成25年10月1日の原子力損害賠償紛争審査会で,小川・東京電力福島原子力補償相談室長は,財物損害の合意書に清算条項を入れているかという趣旨の能見会長の質問に対し,「私どもの賠償を始めた当初にそういった文言を合意書の用紙に入れていた時期がございまして,かなりおしかりを頂いたところもございます。現在の財物賠償の合意書におきましては,そのような文言は入れておりません。」 と答弁しています(議事録)。

  しかるに今回,東京電力が山林・原野・立木等の合意書に上記のような条項を何の説明もなく入れてきたことは,これまでの姿勢を突然に翻すものであり,被害者に対する背信的な行為です。当弁護団の依頼者でも,これまで合意書に清算条項はなかったことから,そのような条項はないだろうと考え,今回の合意書の上記文言に気付くこともなく,既に合意書に署名押印して東京電力に提出してしまっている方がたくさんいらっしゃいます。

  このような東京電力のやり方は不誠実極まりないものであり,当弁護団は断固として抗議します。東京電力は,上記合意書から上記文言を削除すべきであり,既に提出を受けた合意書についても,上記文言を削除するか,上記条項の効果を主張しないと表明すべきです。

 

   本件についての問い合せ先: 原発被災者弁護団 事務局次長 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

   本ニュースのPDFファイルはこちら(78KB)