【報告】飯舘村蕨平集団申立てでセンターが和解案提示理由を補充

 飯舘村蕨平集団申立て(33世帯111名)で東京電力が原子力損害賠償紛争解決センターの和解案の一部を拒否している問題で,センターの担当仲介委員が,平成26年12月10日付けで「和解案提示理由補充書別紙添付)」を提示し,平成26年3月20日付け和解案提示理由書で説明した和解案提示の理由を,更に詳細に補充しました。

   また,各世帯ごとに,東京電力が拒否している部分の和解案について,改めて和解契約書案を示しました。その上で,東京電力に対し,平成26年12月25日までに,和解案を改めて検討し,諾否の回答をするように求めています。

   和解案提示理由補充書では,以下のような点について詳細に仲介委員の判断が述べられています。

  ① 慰謝料一括払いの1年延長について

   蕨平地区の地理的特性等,放射線量の高さ,除染が大幅に遅れている状況,農業や畜産業の再開の困難さ等を具体的に検討し,さらに,陳述書等にあらわれた申立人らの声を具体的に指摘して,蕨平地区の現状からすれば,仮に見込みどおりの時期(平成28年3月)に避難指示が解除されたとしても,蕨平に居住していた申立人らが,平成29年3月以前に従前営んでいた生活に戻ることが可能とはいえないと指摘し,平成29年3月まで1人月額10万円の精神的損害の賠償を認めるべきである,としています。

  ② 被ばく不安による慰謝料の増額について

   本件原発事故直後,蕨平地区に結果的に留まることとなった申立人らは,旧警戒区域・帰還困難区域に比肩する高線量の地点が生活圏全般にわたって多数存在した蕨平地区において,放射線に対する特別な防護措置も講じずに事故前とほぼ同じ生活をしていたことから,放射線被ばくへの現在及び将来にわたる恐怖や不安を感じるのは無理からぬことである,と指摘しています。そして,陳述書等にあらわれた申立人らの声を具体的に指摘して,申立人らの感じている恐怖や不安は,法的保護に値する,すなわち具体的な権利侵害といえるものだとしています。

  ③ 東京電力に対する和解案受諾要請

   そして,仲介委員は,本和解案は,申立人らの提出した主張書面・証拠書面を精査し,センターの福島事務所県北支所において申立人らから直接に話を聞いたうえ,申立人らの職業,世帯構成,本件事故前の居住地である蕨平の地域的特性を考慮し,申立人らの個別具体的な事情を斟酌して提示したものである,と指摘しています。

   さらに,次のような要請で和解案提示理由補充書を締めくくっています。 「 当仲介パネルは,被申立人に対し,申立人らの生活基盤を根こそぎ奪った本件事故の当事者として,新・総合特別事業計画において自ら誓約した当センターの和解案の尊重を改めて認識し,また,本書に記載の点を踏まえて本和解案の趣旨を正確に理解し,再考の上,受諾するよう強く求めるものである。」

 

  センターの仲介委員が,以上のような和解案提示理由補充書を示し,東京電力に対して和解案の受諾を改めて強く要請したことは,非常に重要な意味を持ちます。 センターが審理を尽くし,申立人らの個別具体的な事情も斟酌して提示した和解案に対し,東京電力が,その重要な一部を拒否し続けていることは,本件原発事故の加害者として,到底許されるものではありません。 東京電力は,本件原発事故が申立人らに与えた損害の大きさを改めて十分に認識し,「和解案の尊重」の誓約を遵守して,センターが提示した和解案を受諾すべきです。

 

   本件についての問い合せ先: 弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

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