【報告】飯舘村比曽地区で集団ADR申立て

 

2014.11.5

 

 

 

【報告】飯舘村比曽地区で集団ADR申立て

 

 

 

 2014年11月5日,当弁護団は,飯舘村比曽地区住民の委任を受け,原子力損害賠償紛争解決センターへ集団ADR申立てを行いましたので,ご報告致します。

 

 当弁護団はこれまでに飯舘村長泥地区,蕨平地区住民の集団申立てを行っており,飯舘村で3地区目の集団申立てとなります。

 

 

 

1 申立人

 

 申立人は比曽行政区住民(第1陣の申立人は38世帯,160人,全体では55世帯,188人から受任済み

 

 なお,比曽行政区の震災前人口は,86世帯,339人→世帯ベースで約6割強が参加

 

 

 

2 本件申立ての内容

 

  比曽地区は,帰還困難区域に指定された長泥地区の西隣にあり,行政からは居住制限区域に指定されています。*区域再編地図参照。

 

  本件申立ては,一言でいうと,《帰還困難区域と同等の賠償》を求めるものです。

 

  比曽地区の放射線量は,長泥地区と同様に,本件原発事故発生から現在まで,相当に高い状態です。例えば,「いいたて全村見守り隊」による比曽地区内6箇所の定点放射線測定データでは,H23.9H24.8の1年間の測定値の平均は,4.34μSv/h~10.32μSv/hです。これを環境省の基準によって年間被ばく線量に換算すると,22.6mSv/y~54.02mSv/yに相当します。

 

  比曽地区は,その面積の約7割を山林が占めている谷あいの集落ですが,山林の除染はほとんど手つかずです。農業用のため池についても,除染の計画はありません。国による除染の進捗率は,H26.7.31時点で,宅地が13%,農地が5%に過ぎません。宅地の除染が終わったところでも,除染作業終了直後の測定で8.4μSv/h~16.0μSv/hが計測されるなど,除染の効果に期待も持てません。比曽川沿い一帯の最も上質な田約28.2haが除染で出る放射性廃棄物の仮仮置き場となっており,農業の再開は相当長期間見込めません。

 

  地表から5~10cmの肥沃な土壌は除染で取り除かれてしまい,元の土壌を取り戻すのには相当長期間がかかります。牛の繁殖業も盛んでしたが,飼育していた牛は避難にあたり全て手放しています。

 

  風評被害も今後相当長期間にわたり根強く残るものと予想されます。

 

  以上のような状況から,比曽地区に住民が帰還し,生計を成り立たせ,元のような生活を取り戻すためには,相当長期間がかかることが見込まれ,少なくとも,本件原発事故から6年間帰還できないことは明らかです。

 

  そこで,行政による形式的な区域割りにとらわれることなく,地域の被害実態に基づき,帰還困難区域と同等の賠償が認められるべきです。

 

 

 

3 請求する損害項目

 

 ・建物

 

 ・宅地

 

 ・田畑

 

 ・農機具

 

 ・その他の財物損害(家財道具,井戸,お墓等)

 

 ・日常生活阻害慰謝料

 

 ・被ばく不安慰謝料

 

 ・生活費増加分

 

 など

 

 

 

【追記】

 

*平成26年12月2日に,第2陣として,13世帯41名の申立てを行いました。

 

 第1陣とあわせ,合計51世帯201名の集団申立てとなりました。

 

 

 

 本件についての問い合わせ先:

 

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)    

 

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