【報告】葛尾村集団申立てで,不動産を含めた財物について全損と認められる

葛尾村集団申立てで,不動産を含めた財物について全損と認められる

 

  2014年8月6日,原子力損害賠償紛争解決センターより,葛尾村集団申立て(68世帯,205名)について,財物賠償に関する価値減少率についての「和解案提示理由書」が出されました。あわせて,全世帯について,具体的な和解案が提示されました。その内容についてご報告致します。

 

  ●葛尾村全域において不動産を含めた財物について全損と認める  和解案提示理由書では,本集団申立てにおいて賠償を求めていました不動産を含めた財物について,帰還困難区域や居住制限区域に所在するもののみならず,避難指示解除準備区域に所在するものも原発事故により全損したものと評価されました。

 その主な理由は,以下の事情によるものです。

 ・葛尾村復興委員会は平成28年4月頃を帰還開始時期と想定しているが,帰還に関しては依然として不確定な要素が多く,先が見えない状況が続いており,同時期を経過しても住民がさらに相当期間不動産を使用することができず,管理不能になることが想定されること

 ・葛尾村においては,原発事故以前,住民の多くが農林業や畜産業を営み,沢水や井戸水を利用するなど自然環境と深く結びついた生活を送っていたこと

 ・葛尾村においては,除染に必要な仮置場が平成26年6月末現在においてもなお,約5割しか確保できていないなどから,葛尾村における除染作業が進んでいないうえ,葛尾村の面積の約8割を占める森林のうち現時点で除染計画の対象となっているのが約1割であるなど,葛尾村の面積の7割強は除染の計画自体立っていないこと

 ・上水,主要交通網,医療施設や福祉施設等の生活関連サービスなどの日常生活に必須なインフラが十分に復旧していないこと

 ・葛尾村内の農産物について出荷制限が平成28年4月以後も当面継続する可能性が高いこと

 ・若年世代を中心に多くの村民が積極的な帰還の意向を持っていないこと  以上の事情などにより,原発事故から6年を経過する平成29年3月末までに住民が葛尾村に帰還することは困難であることから,不動産を含めた財物については原発事故により全損したものと評価され,原発事故直前の価値の全額を賠償の対象とするのが相当であると判断されました。

 

  ●不動産賠償基準について

【宅地】

1)原則   所有土地の平成22年度固定資産税評価額×1.43

2)移住の選択も合理的な判断の一つと認められる場合は以下の金額を加算。   (移住先の土地単価-所有土地単価)×250㎡  

【主たる居住用建物】

1)原則

 ア)まず,対象となる建物について,東京電力基準による算定額を基にして,当該建物の新築相当価格を算定。

 ・固定資産税評価ベースの場合は,割り戻し計算を行う。

 ・平均新築単価ベースの場合は,158,800円に床面積を乗じる。

 イ)次に,上記各新築相当価格を基に,同価格が48年間で,最終残価率4割まで下落するという設定で,当該建物の事故時価格を算定。

 ウ)以上のようにしてそれぞれ算定した当該建物の事故時価格を比較し,より高い金額を賠償額とする。

2)移住の選択も合理的な判断の一つと認められる場合は,最終残価率を8割としてそれぞれ算定し,より高い金額を賠償額とする。

3)なお,上記算定に用いた各東京電力基準による算定額の価値減少率については,全損(6分の6)とする。

  以下,財物賠償における価値減少率は,同様に全損とする。  

【上記以外の居住用建物及び非居住用建物】

対象となる建物について,東京電力基準による算定額(平均新築単価ベース)と東京電力基準による算定額(固定資産税評価ベース)とを比較し,より高い金額を賠償額とする。

  【構築物・庭木】 対象となる庭木・構築物について,東京電力基準による算定額(平均新築単価ベース)と東京電力基準による算定額(固定資産税評価ベース)とを比較し,より高額となる方を賠償額とする。

 

  ●東京電力に対し受諾を求めること

以上のとおり,原子力損害賠償紛争解決センターからは,葛尾村の皆さんの被害の実情,葛尾村の現状などをふまえて,不法行為法の基本理念である原状回復の理念に基づき,生活再建に資する内容の和解案が提示されています。特に葛尾村全域において不動産を含めた財物について全損と認める判断は、区域分けに拘泥することなく葛尾村の現状を十分に考慮した上でなされたものです。 当弁護団は,東京電力に対し,新・総合特別事業計画で掲げている「3つの誓い」,特にその中の《原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重する》との被害者に対する誓約を遵守し,いたずらに抵抗することなく,和解案を受諾することを強く求めます。 また,原子力損害賠償紛争解決センターに対しては,仮に東京電力が和解案に対し,反論書面を出すなどして抵抗したとしても,毅然と対応し,和解案の受諾を説得いただくように求めます。

 

 本件についての問い合わせ先:   弁護士 田中東陽(03-3535-5677)

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