【報告】センターが和解案への東京電力の対応について総括委員会所見を公表

【報告】センターが和解案への東京電力の対応について総括委員会所見を公表

 

2014.8.9

 

原子力損害賠償紛争解決センターは,そのHPにおいて,平成26年8月4日付けで,「東京電力の和解案への対応に対する総括委員会所見」を公表しました。

以下,引用します。

 

                       平成26年8月4日

 

東京電力の和解案への対応に対する総括委員会所見

原子力損害賠償紛争解決センター

総括委員会

委員長  大 谷 禎 男

委員   鈴 木 五十三

委員   山 本 和 彦

東京電力は、同社ホームページにおいて、「原子力損害賠償紛争解決センターの和解案への当社対応について」との見出しのもと、中間指針やその考え方から乖離している請求や、客観的事実からすると原発事故との相当因果関係が明らかに認めがたい請求については、その内容を充分に吟味・検討した上で慎重に対応する必要があり、ADR手続においても同様の対応をしている旨記載している。

しかしながら、中間指針は、同指針で明示的に賠償の対象とされていないものでも、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害として賠償の対象となり得ることを認めており、このような中間指針の考え方に基づき、原子力損害の賠償に関する紛争についての和解仲介の手続(以下「和解仲介手続」という。)においては、手続を主宰する仲介委員が、当事者双方からの主張・立証により認められる当該事案の具体的な事実関係の下で、相当因果関係が認められる損害を賠償の対象とし、和解案を提示している。

すなわち、和解仲介手続において仲介委員が提示する和解案に、上記のような、中間指針等から乖離したものあるいは客観的事実からすると原発事故との相当因果関係が明らかに認めがたいものは存しない。

近時、仲介委員が提示した和解案に対し、被申立人から、その全部又は一部について受諾を拒否する旨の回答がされる例が少なからず認められるようになっているが、被申立人において、上記ホームページ記載の理由によりそのような回答に至っているのだとすれば、新・総合特別事業計画において自ら誓約した和解案の尊重を放棄するものというだけでなく、仲介委員が提示した和解案の内容のみならず和解仲介手続自体をも軽視し、ひいては、原子力損害の賠償に関する紛争につき円滑、迅速かつ公正に解決することを目的として設置された当センターの役割を阻害し、原子力損害の賠償に関する法律が定める損害賠償システム自体に対する信頼を損なうものといわざるを得ず、まことに遺憾であり、強く再考を求めるものである。

以 上 」

 

 この総括委員会所見は,浪江町集団申立てや飯舘村蕨平集団申立て,さらには個別申立て案件において,東京電力が近時,センターの和解案の全部又は一部を拒否する対応を取っていることを念頭に置き,東京電力の公表している見解には正当な根拠がないことを指摘しています。

その上で,東京電力の対応は,新・総合特別事業計画において誓約した「和解仲介案の尊重」を放棄し,センターの和解案や和解仲介手続自体を軽視し,ひいてはセンターの役割を阻害し,原賠法が定める損害賠償システム自体に対する信頼を損なうものであると厳しく批判し,東京電力に強く再考を求めています。

 まさに,東京電力による和解案拒否は,同社の「和解仲介案の尊重」という誓約を反故にすることに他ならず,センターにおける和解仲介手続の紛争解決機能を著しく損なうものです。

 センターの総括委員会所見は極めて正当であり,当弁護団としても,東京電力に対し,和解案拒否の対応を改めるよう強く求めます。

 

 

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