【報告】飯舘村蕨平集団申立てで東京電力が拒否回答を維持・拡大

【報告】飯舘村蕨平集団申立てで東京電力が拒否回答を維持・拡大

 

2014.7.17

 

 2014年7月2日付けニュースでご報告しましたように,飯舘村蕨平地区の集団申立て(33世帯,111名)で,センターが平成26年6月30日の進行協議期日及び同年7月2日付けの連絡文書にて,東京電力に対し,和解案(33世帯全部について提示済み)の全部受諾を強く求め,7月16日までに,和解案に対する最終的な諾否を回答するように求めていました。

 

 これに対し,東京電力は,7月15日~16日付けで世帯ごとに回答書を提出しました(ただし,8世帯については16日までに回答書提出未了)。

 

 その内容は,先行2世帯についてと同様に,和解案のうち,

 

 ① 慰謝料一括払いの1年延長(帰還困難区域と同等)を認めた部分

 ② 被ばく不安慰謝料(大人1人50万円,妊婦・子どもは100万円)

 

 の2点について拒否するものでした。

 

  さらに,東京電力は今回新たに,次の論点のある世帯でも和解案を一部拒否してきました(回答書[D4,J3])。

 

 ③ 本件原発事故当時,蕨平地区に生活の本拠がなかった申立人の所有する不動産について,センターが全損での賠償を認めたにもかかわらず,「住居確保損害が認められないから」という理由で,全損賠償を拒否してきました。

   センターは,移住を前提としない場合でも,本件原発事故から6年間使用できないと判断した不動産については,全損賠償を認めており,東京電力も他の多くの事案で,同様の全損賠償の和解案を受諾しています。

   このような理由で和解案を拒否することは,到底理解できません。

 

 ④ 軽トラック等の車両について,「特例抹消登録の手続及び検査記録事項等証明書などの書類の提出をいただきたい」などと要求してきました。

   センターが不要と判断して和解案を提示しているにもかかわらず,このような書類を求めてくるのは,和解仲介手続の不当な引き延ばしとしか考えられません。

 

 和解案のうち,上記以外の点については,《帰還困難区域と同等の賠償》という和解案の考え方は受け入れられないものの,提示された金額については受諾する,と回答しています。

 

 東京電力の回答書は,上記①②の点については,5月27日付けで先行2世帯について提出した回答書と全く同じ内容であり,仲介委員が6月30日の進行協議期日及び7月2日付けの連絡文書にて,和解案の理由をより詳細に説明し,その合理性を説いたにも関わらず,これを完全に無視したものに他なりません。

 その上,東京電力は,和解案のうち拒否する部分を更に拡大してきたもので,センターの和解案を真剣に受け止めているとは思えません。

 

 このような東京電力の態度は,新・総合特別事業計画における《和解仲介案の尊重》《和解仲介手続の迅速化に取り組む》との誓約を反故にするものです。

 

東京電力が,隣接する長泥地区と同等の賠償を認める和解案を拒否したのは,長泥地区は帰還困難区域に指定されているが,蕨平地区は居住制限区域に指定されているから,という形式的な理由に過ぎません。

これに対し,センターの和解案は,蕨平地区の申立人から直接話を聞き,十分な時間をかけて審理を行い,蕨平地区の具体的状況が,隣接する長泥地区と同様の状況であると判断した上で提示されたものです。

このような,被害の実態に基づく和解案の提示はセンターに期待されている重要な役割であり,かかるセンターの和解案を東京電力が拒否することは,センターの存在意義そのものを揺るがすものです。

 

 当弁護団は,かかる東京電力の和解案一部拒否に対し,改めて強く抗議します。

 

 本件についての問い合わせ先:

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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