【報告】浪江町集団申立てでの和解案拒否について全国の弁護団が抗議声明

【報告】浪江町集団申立てでの和解案拒否について全国の弁護団が抗議声明

 

2014.7.7

 

 浪江町集団申立て(申立人15,000人以上)における原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を東京電力が事実上全部拒否した問題について,全国の合計19の弁護団・原告団が抗議声明を出しました。

 飯舘村蕨平集団申立てと共に,東電がセンターの和解案を拒否しており,東電の《和解仲介案の尊重》という誓約が有名無実化する重大な事態となっています。

以下,引用します。

 

 2014年(平成26年)7月4日

原子力損害賠償紛争解決センターの提示した和解案拒否に対する抗議声明

東京電力株式会社

代表執行役社長 廣瀬 直己 殿

 

経済産業大臣

茂木 敏充 殿

 

原子力損害賠償紛争解決センター 御中

 

福島原発被害救済新潟県弁護団

弁護団長 遠藤 達雄

ほか後記18団体 

 

1 本年3月20日,浪江町町民1万5000人以上が東京電力株式会社(以下,「東京電力」と言う。)に対し精神的損害の賠償を求めた集団申立事件(以下,「浪江町集団ADR案件」と言う。)において,原子力損害賠償紛争解決センター(以下,「原紛センター」と言う。)は,①申立人全員に対し平成24年3月11日から平成26年2月末日までの慰謝料を月5万円加算し,②高齢者(75歳以上の者)については,平成26年2月末日までの慰謝料を月3万円加算することを主な内容とする和解案(以下,「本和解案」と言う。)を提示した。

  本和解案については,申立人・東京電力・原紛センター間で協議の上,回答期限が平成26年5月30日までと定められたが,申立人代理人である浪江町は,被害者である町民の早期救済を図るため,同月26日に受諾する旨表明したところである。

  しかしながら,東京電力は,2度にわたって回答期限の延長を上申した上,平成26年6月26日,本和解案を事実上全部拒否する回答を行った。

 

 

2 東京電力は,本和解案を拒否した主な理由について,本和解案は申立人らが浪江町町民であることを理由として一律の賠償を認めるものであり,こうした一律賠償は中間指針等と乖離するものであるから受け入れることはできないと述べている。

  しかし,本和解案は,原紛センターの仲介委員が,申立人全員について書証を精査するとともに,現地調査や複数の申立人に対し実施した意見聴取の結果に鑑みれば,申立人全員が等しく原発事故によって深刻かつ重大な被害を蒙っており,このような被害を慰謝するには,遅くとも平成24年3月以降に少なくとも月額5万円の加算を要すると判断した結果提示されたものである。したがって,東京電力が述べる上記拒否理由は,本和解案の内容を正解しない,極めて不正確かつ不当なものである。

  また,本和解案は,申立人ら全員が本件事故によって長期に亘る避難生活を強いられ続けている中で,中間指針や総括基準が策定された時点以後,申立人ら全員の精神的苦痛がより現実化・顕在化しているとして加算を認めたものであり,中間指針や総括基準との乖離を生じさせるものではない。東京電力は,明らかに本和解案を曲解して拒否したものであり,極めて不当である。

 

 

3 本年1月15日,政府は,原子力損害賠償支援機構及び東京電力が申請していた新・総合特別事業計画(平成25年12月27日付)を認定した。同事業計画において,東京電力は,これまでの総合特別事業計画において謳われていた「5つのお約束」をさらに一歩進めたものとして,損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策として,「ⅰ)最後の一人まで賠償貫徹」,「ⅱ)迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」,「ⅲ)和解仲介案の尊重」の3点を掲げ,これを「3つの誓い」と称している。

  そして,「ⅲ)和解仲介案の尊重」において,「原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重する」だけでなく,「手続きの迅速化などに引き続き取り組む」とも述べている。さらに,同事業計画では「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう,ADRの和解案を尊重する」とも述べているところである。

東京電力による本和解案の全面拒否回答は,自らが宣明した上記方針に真っ向から反するとともに,信義に著しく反するものであって,決して許されるものではない。

 

 

4 東京電力は,これまでも,福島県の避難等指示区域内に生活の本拠を有していた東京電力社員やその家族からの損害賠償請求事案において,原紛センターから提示された和解案を拒否し,また,本年5月27日には,居住制限区域である飯舘村蕨平地区住民33世帯111名が行った集団申立てにおいても,和解案の重要部分について拒否する回答を行った。

  このように,東京電力は,本和解案を拒否しただけでなく,他の事案においても,原紛センターが慎重な審理の下に提示した和解案を拒否している。

  原紛センターの和解案を拒否する態度が続くことは,同センターによる解決制度自体を無に帰するものであり,到底看過できない。

  また,原紛センターは原発事故に関する賠償問題を「円滑・迅速・公正」に解決することを目的として設置された機関である。申立人の数が1万5000人を超えることをもって「一律賠償」であると強弁し,和解案を拒否することは,上記設置目的を蔑ろにするものであって,極めて不当である。

 

 

5 我々は,全国の原発被害者支援に関わる弁護団として,東京電力に対し強く抗議するとともに,このような対応を直ちに改善し,改めて原紛センターの和解案を尊重,遵守することを求めるものであり,その一環として,本和解案を早急に受諾するよう求める。

  また,経済産業大臣に対しては,東京電力に対し,本和解案を受諾するよう強く指導することを求める。

  そして,原紛センターにおいても,本和解案の提示理由について東京電力が理解できるよう再度説明し,本和解案を受諾するよう強く説得することを求める。

以上

 

浪江町支援弁護団 代表 日置雅晴

原子力損害賠償群馬弁護団 弁護団長 鈴木 克昌

福島原発事故損害賠償愛知弁護団 弁護団長 細井 土夫

福島原発被害首都圏弁護団 共同代表 中川 素充 共同代表 森川 清

筆甫地区損害賠償弁護団 弁護団長 尾谷 恒治

みやぎ原発損害賠償弁護団 弁護団長 鈴木 宏一

ふくしま原発損害賠償弁護団 共同代表岩渕敬、齊藤 正俊

原発被害救済山形弁護団 弁護団長 安部 敏

東日本大震災による原発事故被災者支援弁護団 弁護団長 丸山 輝久

原発被害救済千葉県弁護団 弁護団長 福武 公子

原発損害賠償請求を支援する弁護士の会(広島) 弁護団長 小笠原 正景

岡山原発被災者支援弁護団 弁護団長 石田 正也

原発事故被災者支援兵庫弁護団 弁護団長 古殿 宣敬

東日本大震災による被災者支援京都弁護団 団長 川中 宏

原発被害救済茨城県弁護団 団長 渡邉 昭

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団 原告団長 中島 孝

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団

 共同代表 安田 純治 共同代表 菊池 紘

東日本大震災における原発事故被災者支援関西弁護団 弁護団長 金子 武嗣

(順不同)

 

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