【報告】飯舘村蕨平集団申立てでセンターが東京電力に一部拒否回答の再検討を求める

【報告】飯舘村蕨平集団申立てでセンターが東京電力に一部拒否回答の再検討を求める

 

2014.7.2

 

 飯舘村蕨平地区の集団申立て(33世帯,111名)で,平成26年6月30日,進行協議期日が開催され,申立人側,東京電力側双方の代理人弁護士が出席しました。

 この席で,原子力損害賠償紛争解決センターの担当仲介委員は,東京電力に対し,次のように強い表現で,東京電力に対し,同社が一部拒否している和解案の受諾を改めて働きかけました。

 

・東京電力は,和解案の一部(①慰謝料一括払いのH28.4H29.3の1年延長,②被ばく不安を理由とする慰謝料増額,③遅延損害金)について拒否しているが,仲介委員としては,和解案を変更する意思は全くない。

・今回の和解案は,十分な時間をかけ,双方の主張立証を経た上で,審理に審理を重ねて自信を持って提示している。

・東京電力は,和解案の一部のみ受諾し,一部を拒否するという,いわば「いいとこ取り」をするべきではない。

・東京電力は,新・総合特別事業計画で表明している「(センターから提示された)和解仲介案の尊重」「(ADR)手続の迅速化に取り組む」との誓約に真っ向から反した対応をしているのではないか。

 

また,仲介委員は,平成26年3月20日付け和解案提示理由書の内容を,次のようにさらに補足し,蕨平地区について,隣接する長泥地区と同様の状況であると判断した理由を補充しました。

 

・蕨平地区は,9割以上が山林で,田畑の中に宅地がある中山間地域。西は長泥,南は浪江町,東は南相馬市に接し,帰還困難区域に囲まれている。

・山林の放射線量は高く,除染は全くされていない。

・飯舘村役場による測定結果でも,蕨平の宅地からは長泥よりも高い線量が検出されている。蕨平地区の中心部の公民館では,H25.2.13時点でも9.54μsv/hという高線量が検出されている。

・蕨平地区では,第一次産業で生計を立てていた方がかなり多い。風評被害が継続すると想定され,生計が成り立たない。

・蕨平には上水道がなく,井戸水を使っていたが,水源の沢水からも相当程度の線量が検出されている。

・以上のような状況であり,仮に現時点での(行政の)想定どおりH28.3月に避難指示が解除されても,それから少なくとも1年間は帰還は困難で,避難生活を継続せざるを得ない。

・被ばくの不安についても,客観的状況からすれば,長泥と変わらない。

 

仲介委員は以上のように和解案提示理由を掘り下げて説明した上で,東京電力に対し,和解案の受諾を改めて求めました。

 

進行協議期日の後,仲介委員は,7月2日付けで連絡文書を出し,各世帯の和解案(本日までに,33世帯中32世帯について正式な和解案が提示されています)について,東京電力に対し,7月16日までに,和解案に対する最終的な諾否を回答するよう求めました。

 

仲介委員は,連絡文書において,東京電力の和解案一部拒否に対し,

本和解案は,飯舘村蕨平地区の住民である申立人らの個別具体的な事情につき,当事者双方の主張立証を踏まえ,さらに県北支所における口頭審理期日において申立人らから直接お話も伺った上で,平成25年1月25日の申立てから1年以上の審理期間をかけて慎重に検討した結果,最善の案として提示したものです。

 本和解案はいずれも合理的なものであり,これに対する被申立人の回答は不合理で

あり理由がないものと考えますので,一切変更致しません当パネルは,被申立人に対

し,全損害について和解案を受諾されるよう強く求めます。」

と述べています。

 

東京電力が,蕨平集団申立てにおいて,隣接する長泥地区と同等の賠償を認める和解案を拒否しているのは,長泥地区は帰還困難区域に指定されているが,蕨平地区は居住制限区域に指定されているから,という形式的な理由に過ぎません。

これに対し,センターの和解案は,蕨平地区の申立人から直接話を聞き,十分な時間をかけて審理を行い,蕨平地区の具体的状況が,隣接する長泥地区と同様の状況であると判断した上で提示されたものです。

このような和解案の提示はセンターに期待されている役割であり,かかるセンターの和解案を東京電力が拒否することは,センターの存在意義そのものを揺るがすものです。《和解仲介案の尊重》の誓約に真っ向から反した対応と言わざるを得ません。

 

当弁護団は,東京電力に対し,センターの和解案を再度真剣に受け止め,一部拒否回答を撤回して,和解案を全面的に受諾するように求めます。

 

 本件についての問い合わせ先:

弁護士 秋山直人(03-3580-3269)

 

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