【報告】田畑の財物損害の賠償基準公表の申し入れに対する東電の回答について

田畑の財物損害の賠償基準公表の申し入れに対する東電の回答について

 

2014.3.19

 

 2014年2月27日付けのニュースでお知らせしましたように,当弁護団は,東京電力に対し,田畑の財物損害の賠償基準の公表を申し入れていました(申入書)。

 

 これに対し,東京電力から,3月13日付けで回答書が送付されました(回答書)。

 

 東京電力の回答書は,直接請求すれば「面積,賠償単価,持分割合等を予め印字した冊子」が被害者に送られるので,「時価相当額」を確認できるとしています。

 

 しかし,実際には,直接請求しても開示されるのは,㎡あたりの「賠償単価」のみであり,当該田畑が①一般の田畑,②用途地域内に存在する田畑,③介在田畑(農地転用許可を受けている田畑)のいずれの類型として評価されたのかも,かかる賠償単価の算定根拠となる,当該田畑が所在する「状況類似地区」の範囲,「基準地」に関する情報等も開示されませんから,被害者が「賠償単価」の相当性を判断することは極めて困難です。

 

また,東京電力は,賠償基準を公表しない理由として,「個人の資産の状況が特定されるおそれがある」と述べています。

 

 しかし,東京電力は,田畑以外の不動産については賠償基準を既に公表しているのであり,「個人の資産の状況が特定されるおそれがある」というのは,田畑についてのみ賠償基準を公表しない理由にはなりません。

 

 また,「状況類似地区」の設定状況,「基準地」の単価等の賠償基準を公表したからといって,それぞれの被害者がどこにどのような田畑を所有しているかという情報が公表されるものではありません。言うまでもなく,名寄帳(固定資産課税台帳)等の情報は,広く公表されているものではなく,所有者等,権限ある者からの申請がなければ開示されません。

 従って,賠償基準の公表によって「個人の資産の状況が特定されるおそれがある」という主張は,失当です。

 

 東京電力のこのような対応は,賠償基準の相当性について被害者や第三者が検証することを困難にするとともに,直接請求をしなければ東電基準による算定結果を開示しないことで,被害者を直接請求に誘導し,原子力損害賠償紛争解決センターへの申立て・訴訟提起等を困難にさせようという意図に基づくものとみられてもやむを得ないものといえます。

 

 当弁護団は,東京電力の回答に抗議するとともに,同社に対し,引き続き,田畑の財物損害の賠償基準の公表を強く求めるものです。

 

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当弁護団からの申入書のPDFファイルはこちら(131KB)

東京電力(株)からの回答書のPDFファイルはこちら(372KB)